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世界遺産高野山麓にある樹齢400年のカヤの樹に接木の痕跡を発見 当時の人々の交流や生活を推察する一端となる研究成果

Digital PR Platform / 2024年12月23日 20時5分

【研究者のコメント】
堀端章(ほりばたあきら)
所属:  近畿大学生物理工学部生物工学科
     近畿大学大学院生物理工学研究科 生物工学専攻
     近畿大学先端技術総合研究所
職位  :准教授
学位  :農学修士、博士(工学)
コメント:本研究は、民俗学的研究の成果を背景として立案されることで、初めて意味のある成果をもたらします。この研究を通じて、農作物を含む産業用生物に関しては、それを用いる人の関与を理解することなしには、いくら分子遺伝学的情報を積み重ねてもその本質にまでたどり着けないことを実感しました。これからも総合大学である近畿大学のメリットを生かして、産業を介した人と作物との関係を明らかにしていきたいと考えています。特に、このカヤの樹については、平安京の南に位置し、油の流通を管理していた「石清水八幡宮」の関与が指摘されており、近畿圏まで範囲を広げて遺伝構造の解析を進めることで、カヤに関わる人や地域のつながりを明らかにすることができると期待しています。また、和歌山県のこの地域には、空海がカヤの樹の栽培を奨励したとする「榧蒔石」の伝承が残っています。類似の伝承は、近畿だけでなく四国にも存在しています。カヤは縄文時代から普通にある樹ですので、空海が積極的に普及を図ったのはより生産性の高いヒダリマキガヤであった可能性があります。

【用語解説】
※1 ヒダリマキガヤ:カヤの変種の一つ。大きく長い実や種子にねじれた線があることが名前の由来。果実の収量が多く、油の生産性に極めて優れているが、幹がねじれて育ち、枝が多く出ることから材木用には適していない。
※2 接ぎ木技術:同種あるいは近縁種の植物を台木として、優良植物(作物)を穂木として結合させる(接ぐ)ことによって、より優れた特性をもつ植物(作物)を得る技術。台木を切った断面に穂木を接ぐ「切り接ぎ」や、台木の芽の部分を切り取ってそこに穂木の芽を接ぐ「芽接ぎ」など、多様な方法がある。特に、芽接ぎでは、台木の複数の芽に穂木の芽を接ぐ場合が多く、枝ごとに異なる遺伝子型を示す場合がある。接ぎ木技術は、特定の優良個体のクローンを作成する場合に用いるほか、結実までの期間を短縮できる。カヤは、播種から結実までに15年以上かかるが、接ぎ木を行うと数年で結実する。また、カヤの樹のように雌雄のある作物では、実生では雌雄が半数ずつ生じるが、雌樹を穂木として接ぐことで、すべての樹に実を成らせることができる。
※3 ヒコバエ:切り株や樹の根本から生える若芽のこと。
※4 高野寺領:江戸時代に幕藩体制が整備されるなか、平安時代から続く荘園の維持を認められた、紀州藩などに属さない地域のこと。これらの地域では高野山の管理のもと、さまざまな作物などを生産して高野山に年貢として納めることが求められていた。
※5 遺伝的構造:生物は同種であっても地域によって遺伝的な多様性を保有している場合があり、それを遺伝的構造という。集団においては、全体としてどのような遺伝子をどの程度の確率で保有しているかを調べて、遺伝的な特性を評価したものを示す。
※6 RAPD-PCR:ランダムに塩基を並べた短い配列(=ランダムプライマー)を用いてDNAを増幅することを示す。一般的には、任意の場所を増幅できるようにプライマーを設計するが、カヤの樹のように塩基配列情報がほとんどない植物種では設計できないため、RAPD-PCRを用いる。本研究では、予備実験で60種類のランダムプライマーを試し、7種類のランダムプライマーを選抜して用いた。
※7 フィンガープリンティングパターン:RAPD-PCRでは、植物個体ごとに異なるPCR増幅産物が得られ、これらの増幅産物を電気泳動によって分離すると、植物個体に固有のバンドパターンが確認できる。この固有のバンドパターンを一人ひとり異なる「指紋」に例えて、フィンガープリンティングパターンという。
※8 クラスター分析:非類似度行列のなかから、もっとも値が小さくなる対、つまり遺伝的に近いサンプルを見つけてグループ化するという作業を繰り返して、すべてのサンプル間の遺伝的距離を算出する方法。
※9 非類似度行列:フィンガープリンティングパターンにおいて、すべてのサンプルとバンドの組み合わせについて、同じバンドをもっていない程度(非類似度)を並べたもの。非類似度行列の中で最小の値をとるサンプルの対は、すべてのサンプルの中で最も遺伝的に近いサンプルといえる。
※10 デンドログラム:クラスター分析で得られた情報を図示したもの。図の下から順に遺伝的に近いものがグループ化されており、最終的には一つになる。図に示された縦軸方向の長さが時間の長さにおよそ比例しており、枝分かれしたおよその年代を推定することができ、この手法を分子時計という。
※11 クレード:分子系統学の用語で、共通の先祖から派生した全ての子孫により構成される集団を示す。
※12 遺伝子プール:一定の地域に生育する同種の生物がもつ遺伝子の総体。遺伝子プール間の近縁性を評価することで、異なる地域間の関係性を検証できる。

【関連リンク】
生物理工学部 生物工学科 准教授 堀端章(ホリバタアキラ)
https://www.kindai.ac.jp/meikan/505-horibata-akira.html

文芸学部 文化・歴史学科 教授 藤井弘章(フジイヒロアキ)
https://www.kindai.ac.jp/meikan/1172-fujii-hiroaki.html

生物理工学部
https://www.kindai.ac.jp/bost/


▼本件に関する問い合わせ先
広報室
住所:〒577-8502 大阪府東大阪市小若江3-4-1
TEL:06‐4307‐3007
FAX:06‐6727‐5288
メール:koho@kindai.ac.jp


【リリース発信元】 大学プレスセンター https://www.u-presscenter.jp/

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