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骨リモデリング因子Fam102aが骨代謝を制御するメカニズムを解明

Digital PR Platform / 2025年1月7日 14時1分

図3. マウス大腿骨のμCT解析画像と海綿骨量
a. 全身性にFam102aを欠損したマウスb. Rbpjl変異マウス

また、Fam102aが骨芽細胞の分化を制御するメカニズムを探索するため、Fam102a欠損骨芽細胞を用いて網羅的遺伝子発現解析を行った結果、骨芽細胞分化のもう一つのマスター転写因子であるOsterixを含む、Runx2によって制御される遺伝子の発現が減少していることが判明しました。その原因を調査したところ、Fam102aがRunx2の核内局在を制御することで骨芽細胞の分化を正に制御していることが示されました。
さらに、網羅的遺伝子発現解析により、Fam102aの下流で機能する転写因子としてRbpjlを同定しました。このRbpjlを変異させたマウスをCRISPR-Cas9技術を用いたi-GONAD法(用語5)で作製して解析したところ、Rbpjl変異マウス大腿骨において骨量が有意に減少し、Osterixの発現が低下していることが確認されました(図3b)。これらの結果から、Fam102aがRbpjlを介してOsterixの発現を促進することで骨芽細胞の分化を正に制御していることが明らかになりました。


●社会的インパクト
 骨リモデリングの制御機構には未解明の部分が多く残されていますが、本研究を通じてその一端が解明されることで、骨粗鬆症をはじめとする骨疾患に対する新たな治療戦略の提案が期待されます。

●今後の展開
 現在の骨粗鬆症治療では、骨吸収や骨形成のいずれか一方を直接的な標的とする治療薬が主に使用されています。しかし、これらの薬剤には使用期間の制限や骨代謝抑制に伴う副作用といったいくつかの課題が残されています。そのため、次世代の骨粗鬆症治療薬には、骨吸収抑制や骨形成促進を超えた、骨代謝全体を改善する新たな概念に基づく創薬が強く求められています。
 本研究の成果は、Fam102aが骨芽細胞だけでなく破骨細胞の分化を制御することで骨代謝を統合的に調整する可能性を示した点にあります。このことから、Fam102aを基盤とした新たな骨粗鬆症治療法や予防戦略の創成に向けた分子基盤として、本研究が大きく貢献することが期待されます。

●付記
 この研究は、日本医療研究開発機構の革新的先端開発支援事業AMED-CREST「骨恒常性を司る骨細胞のメカノ・カスケードの解明」(研究開発代表者:中島友紀)およびPRIME「加齢に伴うオステオカインの変化がもたらす個体機能低下機構の解明」(研究開発代表者:林幹人)、科学研究費助成事業(20H00551、21K19554、21H03051、24K02563)、武田科学振興財団、アステラス病態代謝研究会、第一三共生命科学研究振興財団、セコム科学技術振興財団等の支援のもとで行われたものです。

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