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【昭和大学・国立科学博物館】太平洋のハゲナマコから4新種候補を含む10種を発見! 〜世界各国の博物館標本の遺伝子解析から多様性を明らかに~

Digital PR Platform / 2025年1月8日 14時5分

【昭和大学・国立科学博物館】太平洋のハゲナマコから4新種候補を含む10種を発見! 〜世界各国の博物館標本の遺伝子解析から多様性を明らかに~



昭和大学(東京都品川区/学長:久光正)の蛭田眞平准教授(富士山麓自然・生物研究所)、国立科学博物館の小川晟人特定非常勤研究員(分子生物多様性研究資料センター)、藤田敏彦動物研究部長(動物研究部)らによる共同研究チームが、ロシア シルショフ海洋学研究所、ニュージーランド国立水大気研究所、オーストラリア ヴィクトリア博物館研究所、国立研究開発法人海洋研究開発機構の研究者らと共同で、世界各国の6カ所の博物館に収蔵される標本を網羅的に比較することで、太平洋の深海底に広く分布するハゲナマコ属の種多様性を見直しました。太平洋全域に分布するとされてきたムラサキハゲナマコが実際には遺伝的、形態的特徴が異なる10種を包含する複合種であり、4種の未記載種を含むことを明らかにしました。




1.研究の背景
 深海底の環境はこれまで生物の種分化を促進する遺伝的交流を制限する障壁や環境勾配が少ない環境と考えられていたため、極めて広い分布域を持つ種が多く存在すると考えられてきました。
 棘皮動物の仲間のナマコ類は深海の海底環境に生息する代表的な大型生物で、形態的特徴から同定された種が太平洋全域のような広範な海域から見つかる例が多く知られてきました。
 ハゲナマコ属 Pannychia は太平洋の漸深海底では一般的なナマコ類であり、約半世紀に渡って太平洋のハゲナマコ属は全てムラサキハゲナマコ Pannychia moseleyi に同定され、ムラサキハゲナマコ1種が太平洋全域に分布すると考えられてきました。一方で、近年、太平洋各地や南インド洋から採取されたハゲナマコ属を扱った研究から形態的差異や遺伝的な隔たりが相次いで報告されたことで、6種に再編する分類が提示されていました。しかし、ハゲナマコ属の真の多様性の解明には、分布域全体を網羅する標本の比較に基づく再検討が必要な状況にありました。


2.研究の成果
 本研究では、南北太平洋、インド洋、南極海で1986~2019年に採集され、 国立科学博物館に加えて日本、オーストラリア、ニュージーランド、ロシア、アメリカの6つの博物館及び研究機関に収蔵されていた178個体のハゲナマコ属の標本を調べました。各国から集めた標本について2つの遺伝子解析手法(COI遺伝子を用いたDNAバーコーディングとゲノム全体の一塩基多型情報を比較するMIG-seq法)と形態的特徴による比較を行うことで、ハゲナマコ属の種多様性を再検討し、その種境界(種の定義)を見直しました。
 COI遺伝子と全ゲノム一塩基多型情報を用いた系統解析ではそれぞれハゲナマコ属内に10系統群を識別し、それは2つの遺伝子解析手法の結果と一致しました。これら識別された10系統群は互いの遺伝的な差異が十分に大きく、また、その系統群と一致する形態的特徴の違いが確認できたことから、これら10系統群をそれぞれ異なる種として扱うことが妥当と結論づけられました。
 10種のうち5種は、形態学的特徴から、ムラサキハゲナマコ P. moseleyi、ハゲナマコ P. virgulifera、 シンカイハゲナマコ P. henrici、ナガサキハゲナマコ P. nagasakimaruae、ミサキハゲナマコ P. rinkaimaruae に、それぞれに同定できました。さらに、もう1種はムラサキハゲナマコの新参異名の一つ Laetmophasma fecundum に同定され、ハゲナマコ属の独立した種 P. fecundum として再設立されました。残りの4系統群は未記載種(新種候補)と考えられました。

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