【学習院大学】カイコガ科の野生種イチジクカサンの高精度ゲノムアノテーション情報を公開
Digital PR Platform / 2025年1月28日 20時5分
■研究の内容
2024年6月に同研究グループが発表したイチジクカサンゲノムを用いて解析を行ったところ、ゲノムのホモ接合性※2が極めて高く、99.9%以上がホモ化していることが判明しました。そのため、このイチジクカサン系統は遺伝的に均一な集団であり、遺伝学の実験材料に適しているということが改めて確かめられました。
イチジクカサンのゲノムは、カイコのゲノムとほとんど同じ構造を有していますが、カイコでは第11染色体上に存在する核小体形成領域(NOR)が、イチジクカサンでは第20染色体上に存在することが明らかになりました。NORが転座※3した痕跡は見られないため、カイコとイチジクカサンにおいては、それぞれ独立にNORがゲノム中で発達したと考えられます。
■今後の展開
イチジクカサンはカイコとは異なり、休眠することなく1年中世代が更新し続けます。また、カイコの食草であるクワを食べて成長することはできず、ガジュマルを主たる寄主植物としています。さらに、カイコが性フェロモンとして利用しているボンビコールという成分には誘引されず、官能基が異なるボンビカール、ボンビキルアセタートに誘引されることが明らかになっています。今回整備されたアノテーション情報を利用することによって、上記のようなカイコとの生理的・生態的相違を生み出す遺伝子基盤を明らかにすることができると期待されます。
■発表者
李允求 学習院大学 助教
藤本章晃 岩手大学 特別助教:発表当時 現:九州大学 学術研究員
山口勝士 基礎生物学研究所 主任技術員
重信秀治 基礎生物学研究所 教授
佐原健 岩手大学 教授
嶋田透 学習院大学 教授
■論文情報
論文名:Comprehensive genome annotation of Trilocha varians, a new model species of Lepidopteran insects
雑誌:Scientific Data
著者名:Jung Lee, Toshiaki Fujimoto, Katsushi Yamaguchi, Shuji Shigenobu, Ken Sahara, Toru Shimada
DOI:10.1038/s41597-025-04411-3
■研究助成
本研究はJSPS科学研究費助成事業(J18H03949,20K15535,24K17900)の支援を受けて実施されました。
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