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【日本大学】歯周病関連細菌がインフルエンザウイルス感染を促進させることが明らかに〜良好な口腔環境がインフルエンザ予防につながる可能性〜

Digital PR Platform / 2025年1月30日 14時5分

【日本大学】歯周病関連細菌がインフルエンザウイルス感染を促進させることが明らかに〜良好な口腔環境がインフルエンザ予防につながる可能性〜



【研究成果のポイント】
◆ 歯周病関連細菌Porphyromonas gingivalisが産生するタンパク質分解酵素「ジンジパイン」がインフルエンザウイルスのヘマグルチニンを開裂させ、ウイルスの感染を成立させることを発見しました。
◆ 歯周病を予防し良好な口腔環境を保つことが、インフルエンザ予防につながる可能性があります。




【概 要】
 現在猛威を振るっているインフルエンザは、主に高齢者においてはしばしば重症化し死に至ります。そのため、特に高齢者に対するインフルエンザ予防対策は重要です。
 インフルエンザウイルスが宿主細胞へ侵入するには、ウイルス表面にあるヘマグルチニン(HA)が宿主細胞にある受容体(シアル酸)と結合し、ウイルスが宿主細胞内に取り込まれる必要があります。その後、ウイルスと宿主細胞は膜融合しますが、この融合にはHAが前もってタンパク質分解酵素によって切断(開裂)されていることが必須です。HAが開裂することで、インフルエンザウイルスが宿主細胞に初めて感染できるようになるため、HAの開裂は感染の成立において最重要です。この開裂においてインフルエンザウイルスは、主に宿主細胞由来のタンパク質分解酵素を利用しますが、黄色ブドウ球菌が分泌するタンパク質分解酵素も同じ働きをすることが知られており、細菌由来のタンパク質分解酵素もインフルエンザの感染に関与している可能性があります。
 日本大学歯学部 感染症免疫学講座 神尾宜昌 准教授、今井健一 教授らの研究チームは、歯周病など口腔環境が不良な方に多く認められる細菌Porphyromonas gingivalis(歯周病関連細菌)が産生するタンパク質分解酵素「ジンジパイン」がHAを開裂させ、インフルエンザウイルスの感染を促進させることを世界で初めて明らかにしました(図1)。この研究成果は、良好な口腔環境を保つことが、インフルエンザの予防につながる可能性を示唆しています。
 本研究成果は、2025年1月8日に米国生化学・分子生物学会が発行するJournal of Biological Chemistry誌(電子版)に掲載されました。


【研究の背景】
 現在、過去最多の患者数となるなど猛威を振るっているインフルエンザは、主に高齢者において重症化しやすく、毎年数千人、大流行時には数万人が亡くなります。このため、特に高齢者のインフルエンザ予防は極めて重要で、高齢者療養施設などでは徹底的な感染予防対策が必要です。
 A型、B型インフルエンザウイルスの表面にはヘマグルチニン(HA)とノイラミニダーゼ(NA)がスパイク状に並んでいますが、これらのスパイクタンパク質がインフルエンザウイルスの感染・増殖機構に重要な役割を果たしています。インフルエンザウイルスの感染・増殖過程は、インフルエンザウイルスのHAが、宿主(注1)細胞のシアル酸を受容体として認識し結合、エンドサイトーシスによりエンドソームに取り込まれることで宿主細胞内へ侵入します。その後、エンドソーム膜とウイルス膜が融合することで感染が成立します。しかしながら、膜融合するにはHAの前駆体であるHA0が、前もってHA1とHA2に切断(開裂)されている必要があります。そのため、HAが開裂しているかどうかが、インフルエンザウイルスの感染成立において非常に重要になります。その後、宿主細胞内でウイルスゲノムの複製とウイルスタンパク質が合成され、子孫ウイルスが宿主細胞膜から出芽し遊離します。このとき、ウイルスNAが宿主細胞膜上のシアル酸を分解し、子孫ウイルスのHAがシアル酸に結合するのを防ぎます。
 上気道に近い口腔は、さまざまな呼吸器疾患の発症や重症化に深く関与しています。インフルエンザとの関連についても報告がなされており、口腔衛生状態が悪い者では良好な者に比べインフルエンザの発症リスクが高いことが明らかとなっています(Kawamoto et al. PLoS One. 2021)。さらに、歯科衛生士による口腔衛生管理を行うことによりインフルエンザの発症リスクが低下することが明らかにされています(Abe et al. Arch Gerontol Geriatr. 2006)。しかしながら、その分子メカニズムは未解明のままでした。
 このような背景から、日本大学歯学部 感染症免疫学講座の神尾宜昌 准教授と今井健一 教授らの研究チームは、インフルエンザウイルス感染における口腔細菌の役割について着目した研究を推進しており、2015年に口腔細菌が産生するNAがインフルエンザウイルスの放出を促進させることを明らかにしています(Kamio et al. Cell Mol Life Sci. 72:357-366. 2015)。

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