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世界初、土壌中における微生物の長期生存をコントロール ~土壌中からの温室効果ガス排出削減に資する基盤技術を確立~

Digital PR Platform / 2025年2月4日 19時3分






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図4. 大腸菌の土壌中生存率に大きな影響を与えた転写因子の実験結果例。





(A)欠損させることで生存率が向上、(B)欠損させることで生存率が低下。

③特定した遺伝子の微生物における機能
 先に記述した通り、大腸菌はモデル微生物として、各遺伝子の機能に関する知見が蓄積されています。それらの先行研究の情報を元に、本研究で特定した転写因子の微生物における機能をまとめました。赤字は欠損させることで生存性が向上した転写因子を示し、青字は低下した転写因子を示しています。これらの転写因子は、定常期*10ストレス*11(緑)、窒素源代謝*12(黄)、炭素源代謝*13(橙)、および浸透圧*14ストレス(青)に関わるものが含まれていました。これらのことから、微生物は土壌中で長期生存するために、定常期や浸透圧のストレス適応、さらに炭素源や窒素源の代謝に関わる遺伝子群を利用していることが分かりました。また、本研究の解析から、これらの転写因子は微生物種間における保存性が高く、微生物にとって普遍的な機能であることも合わせて分かりました。以上のように、これまでの実験室での液体培地を用いた短期的な解析では明らかになっていなかった、土壌中での長期生存に関わる転写因子の特定とその機能を、本研究において初めて解明したと言えます。



[画像5]https://digitalpr.jp/simg/2341/103515/650_141_2025020411362967a17d2d1c507.png



図5. 特定した遺伝子の微生物における機能分類

4.各社の役割
 NTT:藻類など、光合成を行う微生物における遺伝子の調節機構を明らかにする知見とその利用法を活用し、研究立案や大腸菌の遺伝子の機能解析を明らかにしました。
 明治大学:大腸菌の転写制御機構および転写制御因子に関する知見を活用し、土壌中における大腸菌の生存性を測定する実験系を確立しました。それに基づいて、土壌中の大腸菌の生存性試験を実施し、土壌中の微生物の生存性に関与する新規遺伝子を特定しました。

5.今後の展開
 本研究は、単一の細菌(大腸菌)における全転写因子を対象とし、土壌中での細菌の長期生存に必要な遺伝子を包括的に特定した初めての研究です。特定した遺伝子は転写因子であるため、これらの転写因子が調節する遺伝子をさらに解析することで、土壌中での長期生存に関わる分子機構をより詳細に解明することができます。また、転写因子は栄養などの環境シグナルを受けて機能が変化することが知られているため、そのシグナルを特定して利用することで、遺伝子の発現を介した生存性のコントロールが可能になります。これらの課題をモデル生物である大腸菌にとどまらず、土壌中の物質循環を担う微生物にも適用することで、温室効果ガスの削減、過剰な窒素源の環境への流出量削減や、化学肥料の使用量減少を通じた環境負荷の低減が期待されます。例えば、硝酸から窒素、N2Oから窒素へ変換する微生物の土壌中の生存性を高めることで、N2O排出量の減少や過剰な窒素源の環境への流出量の減少が実現可能になると考えられます(図6)。土壌中の物質循環は、多様な微生物の機能で成り立っているため、本基盤技術を適用する際には、土壌中の生物多様性を適切に維持することが重要となります。そのため、土壌中の循環系を評価しながら、研究開発を進めていきます。

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