1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. プレスリリース

「老齢マウスを使って加齢にともなう記憶力低下の原因を解明」-メラトニンの脳内代謝産物AMKに記憶力低下の改善薬として期待-

Digital PR Platform / 2024年1月19日 14時5分


【研究成果の概要】
 研究グループは、海馬においてどのようにAMKが合成されるのかを解明するために、松果体、血漿、海馬のメラトニン、AFMK(N1-acetyl-N2-formyl-5-methoxykynuramine:メラトニンから作られる第一段階の代謝産物)とAMK(AFMKから作られる代謝産物)の量を比較して、松果体から分泌されたメラトニンが血液を介して海馬に到達して、その後海馬においてAMKに変換されることを突きとめました(図1)。この時AMKの合成に関与する酵素の遺伝子の検討も行い、新しい候補遺伝子も見つけました。次に、マウスにおいても老齢になると記憶力が低下することはすでに文献(※1)で明らかにしておりますが、その原因を調べる実験を行ったところ、老齢になると海馬におけるAMKの量が若齢の1/20以下になること、またその時にAMKの合成にかかわる酵素の遺伝子の発現が有意に減少することを突きとめました(図2)。合わせて、AMKを投与すると海馬において記憶形成に重要であると報告されているタンパク質のリン酸化が誘導されることも見出しております。さらに、老齢マウスと若齢マウスの海馬で発現している遺伝子を網羅的に解析した結果、老齢になると長 期記憶形成に関与する多数の遺伝子の低下を認めました(図3)。


【研究成果の意義】
 本研究成果から、人においても老齢になると海馬におけるAMK量が低下し、そのことにより記憶力の低下が引き起こされている可能性が考えられます。メラトニンは海外では睡眠を促すサプリメントとして広く利用されており、人において副作用がほとんどないことがわかっています。高齢者の生活の質(QOL)を向上させるためには、記憶力低下の改善は重要な課題であります。AMKあるいはAMKを基盤とした新薬の開発は、加齢性の記憶障害や認知症の前段階とされる軽度認知障害(MCI)における記憶力改善薬として期待されます。さらに人以外でも、ペットの高齢化への対処や警察犬や盲導犬の学習時の利用が考えられ、今後の展開が楽しみな物質であります。


【用語解説】
※文献1(以前の成果論文)
The melatonin metabolite N1-acetyl-5-methoxykynuramine facilitates long-term object memory in young and aging mice. Iwashita H, Matsumoto Y, Maruyama Y, Watanabe K, Chiba A, and Hattori A. Journal of Pineal Research. 2021; 70 (1): e12703.

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください