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高効率の円偏光発光フィルムを生み出すキラル誘起添加剤を開発 〜発光性ポリマーにわずか3%加えるだけ!--北里大学

Digital PR Platform / 2024年2月22日 14時5分

 円偏光には「左回り」と「右回り」の2種類があり、上記の技術に応用するためには、どちらかを取り出す必要があります。通常の光(自然光)は「左回り」と「右回り」の円偏光が1:1の割合で存在するため、フィルターを用いて選別する方法が一般的です(図1a)。しかし、この方法では、50%の光を捨てることになり、光量が半減してしまいます。また、フィルターを組み込むことにより装置が複雑化する問題も残されています。これを解決する方法の一つとして、「左回り」または「右回り」のどちらか一方の円偏光を優先的に発生させる円偏光発光色素の開発が盛んに行われています(図1b)。これらを光源として、直接円偏光を発するOLEDの開発が可能となります。

 円偏光発光色素の設計には、構造に片方のキラリティーを持つ分子(キラル分子)を用いることが不可欠です。しかし、それには光学分割や不斉合成といった難易度の高いプロセスが避けられず、安価な大量合成が難しいことが予想されます。本研究では、これを解決するために、キラリティーを持たない発光性ポリマーに、キラリティーを誘起する添加剤を少量加える方法で、汎用的な発光性ポリマーを円偏光発光色素に変える手法の開発を進めていました。「発光性ポリマー」+「キラル誘起添加剤」の組み合わせで円偏光発光を生み出す研究は、国外の研究グループを中心にいくつか発表されていますが、ポリマーにキラリティーが誘起されるメカニズムは分かっていません。また、ドープ率や、発生する左右の円偏光度(円偏光の偏りの割合)に課題が残されており、優れた材料を開発する方法論を模索する段階にあります。


■研究内容と成果
 本研究では、キラル誘起添加剤として [2.2]パラシクロファンに連結したキラルな放射状カルバゾール分子を新しく開発しました。複数の置換基が導入された[2.2]パラシクロファンはラセミ化しない安定なキラル骨格で、薄膜を形成する際に必要なアニーリング(熱処理)【注4】に耐えることができますが、効果的な化学修飾方法が確立されていませんでした。本研究では、ボロキシン【注5】と呼ばれる化学種の誘導体をカップリング反応に用いることで、[2.2]パラシクロファンをベースとした新しい材料への効率的なアプローチが可能になることを見出しました。これを利用して新しい添加剤の開発に成功しました。

 市販の発光性のポリマー(F8BT)に、開発した添加剤を重量比3%加え、スピンコート【注6】によって薄膜を作製し熱処理したところ、ポリマー由来の強い円偏光発光を示すことがわかりました。この時、円偏光発光を評価する指標である非対称性因子gCPL値は0.01であり、一般的なキラル有機化合物のgCPLよりも10〜50倍高い値を示しました。キラルな添加剤そのもののgCPL値は0.0005以下であること、F8BTはキラリティーを持たない構造で円偏光発光を示さないことから、添加剤によってF8BTのキラリティーが誘起されたことがわかります。今回開発した化合物は少量でもキラル誘起添加剤として機能することが特徴です。そのため、従来の片方のキラリティーを持つ分子を利用した円偏光発光よりも低コストでの製造が可能となります。

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