植物の精細胞放出を制御する簡便な方法を開発
Digital PR Platform / 2024年3月18日 10時0分
―重複受精における精細胞活性化機構の解明に期待―
横浜市立大学 木原生物学研究所 杉直也特任助教、丸山大輔准教授らを中心とした研究グループは、青色光(ブルーライト)*1を照射するという非常に簡便な操作で効率的に花粉管の破裂を誘導できることを発見しました(図1)。
種子を作る多くの植物の精細胞は自ら泳ぐことができず花粉管の内部を輸送されます。精細胞は卵細胞の近くまで到達した花粉管の先端が破裂することで放出され、放出された精細胞は活性化のステップを経て卵細胞との受精が可能となります。生体内においてこの花粉管破裂は厳密に制御されていますがその全容は明らかになっておらず、人為的な花粉管破裂の制御にも技術的な課題が多くありました。本研究では、青色光を照射するという非常に簡便な操作で花粉管破裂を効率的に誘導する方法論を確立しました。効率的な花粉管破裂誘導法の開発により、花粉管破裂直後に素早く起こる精細胞活性化機構の解析への新たな道が開けました。このことは植物独自の重複受精の仕組みの解明に貢献するものです。さらには、花粉管破裂異常が原因で交雑できない種間の雑種形成を通した有用作物開発などへの展開も期待できます。
本研究成果は、植物専門誌「Plant and Cell Physiology」に掲載されました。(2024年3月12日)
研究成果のポイント
・青色光を用いることで人為的に花粉管破裂を効率良く誘導する方法論を確立
・シロイヌナズナに限らず、複数の植物種の花粉管で破裂を誘導できる
・重複受精における精細胞活性化機構の理解に貢献する技術
[画像1]https://digitalpr.jp/simg/1706/84896/700_170_2024031415031065f2931e23f4f.jpg
図1 青色光照射による花粉管破裂誘導
野生型シロイヌナズナの花粉管に対して青色光照射を開始してからの継時変化。矢尻は破裂した花粉管を示す。
1分以内に約半数という高い効率で花粉管破裂を誘導できた。
研究背景
穀類など被子植物の種子の形成には2つの精細胞が卵細胞と中央細胞とそれぞれ受精する重複受精が不可欠です。この精細胞の通り道である花粉管は素早い先端生長を示す特殊な細胞であり、めしべ内の細胞がひしめく環境でも細胞間を掻き分けるように力強く素早く伸長する頑健性がある一方で、卵細胞の近くに到着すると破裂して精細胞を放出する鋭敏性を兼ね備えています。杉特任助教らの研究グループは、モデル植物であるシロイヌナズナの花粉管を材料として研究を行う過程で、青色光を照射する条件下では花粉管が効率良く破裂することに気付きました。そこで本研究では、花粉管破裂を制御するメカニズムの解明および人為的な花粉管破裂制御技術の開発に貢献する知見が得られると考え、より詳細な解析を進めることにしました。
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