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微小な“ねじれ”を由来とするタンパク質結晶の不完全性の観測に成功

Digital PR Platform / 2024年5月8日 10時0分

写真

-ねじれの起源に基づいた分子性結晶の品質制御に期待-



 横浜市立大学大学院生命ナノシステム科学研究科 鈴木 凌助教、橘 勝教授、小島 謙一名誉教授ら研究グループは、微小な“ねじれ”を由来とするタンパク質結晶*1の不完全性の観測に成功しました。
 本研究成果は、米国化学会の国際学術誌「The Journal of Physical Chemistry Letters」に掲載されました。(2024年4月5日)


研究成果のポイント 
・微小なねじれによるタンパク質結晶の不完全性を観測
・ねじれが小さいほど完全結晶に近いねじれ結晶のふるまいを発見
・結晶がねじれる原理の起源を提案
・タンパク質結晶をはじめ、ねじれの起源に基づいた分子性結晶の品質制御に期待









[画像1]https://digitalpr.jp/simg/1706/87699/500_269_202405071534456639cb854d7f9.jpg
図1 タンパク質結晶の完全性とねじれの関係


研究背景

 結晶とは、ダイヤモンドやSi(半導体シリコン)の結晶に代表されるように、原子や分子が規則正しく配列した固体状態のことを示します。その形は、雪の結晶であれば六角形、塩の結晶であれば立方体など、物質固有の結晶学的に安定 でフラットな結晶面から構成されています。しかし、一見すると不安定であるにもかかわらず、世の中に存在する多くの結晶はねじれた形を持つことが知られています。最近では、本研究グループによりタンパク質の結晶がわずかにねじれていることを発見し、この“ねじれ”は非対称な形状を持つ分子からなるすべての結晶に存在する、結晶本来の性質である可能性を提案しました[1]。一方、これまで欠陥や“ねじれ”が一切存在しない完全結晶となり得るタンパク質の結晶があることも発見されていました[2]。しかし、なぜねじれ結晶になるのか、なぜ完全結晶になりうるのか、その原理はこれまで未解明でした 。


研究内容
 本研究グループは、大型放射光*2施設の高エネルギー加速器研究機構「フォトンファクトリー(PF)*3」のBL-14BおよびBL-20Bにおいて、グルコースイソメラーゼ結晶(以下、GI結晶)のデジタルX線トポグラフィ*4を行いました。デジタルX線トポグラフィでは、結晶を微小回転させながら回折X線の強度のふるまいを測定するロッキングカーブ測定*5を行いました。今回用いたGI結晶は2種類の結晶構造があります。具体的には、GI分子の積層がわずかに異なるI222(以下、I-GI結晶)とP21212(以下、P-GI結晶)の空間群を持つ構造です。これまで、I-GI結晶は完全結晶に匹敵する極めて高い品質を持つ結晶であることが分かっています[2]。
 本研究では、P-GI結晶のデジタルX線トポグラフィにおいて、I-GI結晶と同じく転位に代表される結晶欠陥が存在しないことが分かりました。一方、結晶の回転軸に沿ってX線回折*6位置が変化する特異なふるまいが観測されました(図2)。このふるまいは10-6~10-5 º/µm程のわずかな“ねじれ”に起因していることが分かりました。これは、本研究グループが最近報告した鶏卵白リゾチーム結晶の微小な“ねじれ”以下の大きさであることが分かりました。

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