タンパク質結晶の高強度化と高延性化を実現
Digital PR Platform / 2024年5月30日 10時0分
-生体分子であるタンパク質の材料化へ一歩前進-
横浜市立大学大学院生命ナノシステム科学研究科 高久大輝さん(博士後期課程1年)、鈴木凌助教、橘勝教授、小島謙一名誉教授ら研究グループは、タンパク質結晶*1に架橋を施すことで、高強度かつ高延性な特徴が付与されることを世界で初めて明らかにしました。この結果は、もろく壊れやすいタンパク質結晶が新しい素材として展開できる可能性を示しています。
本研究成果は、米国物理学会の国際学術誌Physical Review Materials誌に掲載されました。(日本時間2024年5月30日)
研究成果のポイント
・架橋タンパク質結晶の力学特性の評価に成功。
・架橋によるタンパク質結晶の脆性から延性への変化を観測し、その延性の起源を解明。
・材料特性の新たな知見の提供のみならず、タンパク質結晶の新材料化にも期待。
[画像1]https://digitalpr.jp/simg/1706/88973/500_306_202405291334026656b03a47f8c.jpg
図1 本研究の概要図
架橋によるタンパク質結晶の高強度化と高延性化と、
それらの圧縮試験による応力ひずみ曲線の解析や内部の欠陥構造の詳細を観察
研究背景
近年、気候変動による社会問題や国際情勢を背景に、エネルギー消費量の削減や持続可能なエネルギーの開発が世界中で取り組まれています。そのような環境配慮の観点から、生体分子であるタンパク質を素材とした材料の開発が注目されています。実際にタンパク質を素材とした非晶質材料であるクモの糸は高い強度を持ち、その環境適応性と優れた硬さから実用化まで進んでいます。同様に、タンパク質の結晶性材料であるタンパク質結晶も次世代の新材料として期待されています。しかし、弱い分子間相互作用によって構成されたタンパク質結晶は、非常にもろく壊れやすい弱点があります。このもろさを克服するために、架橋と呼ばれる手法が注目されています。一般に、架橋とは高分子同士を結合させて、物理的、化学的性質を変化させる方法です。タンパク質結晶においても、架橋分子によって結晶内のタンパク質分子間に共有結合が形成され、結晶が壊れにくくなることは古くから知られていました。しかし、この強化法は経験的な域を出ておらず、材料力学的観点から見た架橋タンパク質結晶の特性はほとんど理解されていません。この強化現象を実験的に明らかにすることは、架橋による強化のメカニズムの理解に留まらず、新材料創成に向けても重要な知見となります。
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