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魚類胚の卵黄多核層における糖新生を発見--北里大学

Digital PR Platform / 2024年6月10日 14時5分

魚類胚の卵黄多核層における糖新生を発見--北里大学



北里大学海洋生命科学部の古川史也講師、清水茉莉乃(博士課程)、児玉孝文(修士課程)、台湾・中央研究院のPung-Pung Hwang博士(Distinguished Research Fellow)、東京大学大学院理学系研究科附属臨海実験所の黒川大輔助教、東京大学大気海洋研究所の高木亙助教、城西大学理学部の佐野香織准教授、徳島大学大学院医歯薬学研究部の馬場麻人教授らの研究グループは、ゼブラフィッシュ、クサフグ、およびトラザメの胚を用いて研究を行い、発生途中の魚類が持つ「卵黄多核層」と呼ばれる特別な細胞層にグルコースを合成(糖新生)する能力があることを発見しました。




 この研究成果は3つの研究論文としてそれぞれ、PNAS Nexus(2024年3月21日付)、Comparative Biochemistry and Physiology Part A(2024年5月10日付)、Physiological Reports(2024年5月29日付)に掲載されました。


■研究成果のポイント
・卵生脊椎動物の胚がどのようにグルコースを得ているかは不明であった
・真骨魚類(ゼブラフィッシュ・クサフグ)および板鰓類(トラザメ)の卵黄多核層がグルコースを合成することを発見
・他の脊椎動物で類似の現象は知られておらず、比較研究が待たれる


■研究の背景
 血糖値の上昇や下降が私たちの体に重大な影響をもたらすことからも想像できる通り、グルコース(ブドウ糖)はヒトを含むほとんどの動物にとって非常に重要な糖質です。そのため、多くの脊椎動物は主に肝臓を使い、血糖値が一定になるよう調節しています。すなわち、グルコースが不足する時はこれを合成し、過剰な時はグリコーゲン等に変換して蓄えています。
 さて、グルコースは成体にとってだけでなく、卵が受精して発生していく過程(胚の段階)でも重要な役割を持っています。そのため、ヒトを含む哺乳類では普通、母体内で母親から胚へ常にグルコースが供給されており、これが胚の正常な発生を助けています。しかし、魚類をはじめとした卵生(卵で生まれる)脊椎動物の胚は多くの場合、母親から離れており、お腹のあたりにため込まれている卵黄の栄養のみを使って発生を進めなければなりません。しかし、この卵黄中にはタンパク質や脂質が豊富に含まれている一方で、グルコースをはじめとした炭水化物は非常に少ないということが知られています。
 これまでに、卵生脊椎動物の卵黄にはほとんどグルコースがないものの、こうした胚は正常に発生できることが知られていました。また、いくつかの魚類(マダイ、タラ、ゼブラフィッシュ)の発生過程では、元々ほとんどなかったグルコースが増加することが報告されていました。しかし、このグルコースがどこから来るのかは、これまで知られていませんでした。また興味深いことに、この現象はグルコース調節の中心器官である肝臓が形成されるよりも前に起こっているようでした。

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