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世界初、錯覚利用で複数モニタの枠を超えて飛び出す巨大3D空中像の提示システムを実現~透明視錯覚を活用した映像の欠損補完により3D映像を汎用的なデバイスで提示可能~

Digital PR Platform / 2024年6月17日 10時0分

1.背景
 従来、広告、エンターテイメント、イベント、VR/ARなどの領域で、大きな3D映像を提供するためには、重厚なヘッドセットや暗室、大きな液晶モニタなど、専用の機材や空間が必須でした。また、汎用ディスプレイを複数個並べて、単一の大きな映像を提示する方法(Tiled display)は、主に2D映像で活用されており、3D映像の提示に関しては、モニタのベゼル(縁)が映像を分断することで大きな違和感を引き起こすため、同じ種類のモニタを綺麗に整列する必要がありました(図1 左上)。そのため、既存の手法では準備に手間と労力を要することが課題となっていました。
 NTTコミュニケーション科学基礎研究所(CS研)は、人が感じるさまざまな錯覚現象を通じて、人の感覚・知覚メカニズムを探る人間科学の研究に取り組んできました。その過程で、画像の明るさを適切に設計することで、物体が遮蔽物の手前に半透明に重なるように知覚される「透明視錯覚」、および画像中の描画されていないところを補完する脳のしくみに関する知見を蓄積してきました。今回、これらの知見を活用し、錯覚を用いることで、専用機材や空間に限定されない新しい映像表現の実現に取り組みました。

2.成果の概要
 本研究では、モニタ群の3D映像提示に透明視錯覚を応用し、図1右上のように異なる種類のモニタがバラバラな位置に配置されている状態でも、それぞれのモニタの物理的位置を考慮して映像を提示できるシステムを考案しました(※2)。今回、これらの人間科学の知識と新しい提示技術を組み合わせることで、バラバラの異種モニタ群で構成された提示システムでも、巨大な立体像が飛び出て見えるような3D空中像を知覚的に提示することに成功しました。
 本技術では、バラバラのモニタ群から飛び出す3D空中像を提示するために、まずモニタ群の物理的な位置関係のキャリブレーションを行う手法を提案しました。これにより、バラバラのモニタ群であっても、モニタ間で映像の位置がずれず、全体で一つのまとまりのある映像を提示できます。その上で、透明視錯覚を誘起する映像の明るさ調整を施す方法を導入することで、モニタのベゼルや乱雑な配置によるモニタ間の隙間で映像に欠損が生じる状況でも、脳がそれを補完でき、結果として飛び出す3D空中像提示の実現が可能となります。
 このとき、浮かび上がる空中像は、モニタ間の隙間の前面にもまたがることになります。このことは、モニタ群がある場所とは切り離された本来何も存在しない空間に、空中像が浮かび上がって感じられるような作用をもたらし、空間に情報を付加するAR的な演出効果が可能になります。従来このようなAR体験は、光学素子やセンサ、計算部を備えた特殊なヘッドセットを装着しなければ鑑賞できないものであったことに対し、本技術はモニタ間の隙間および3D映画などで使用される汎用的な3D眼鏡により、新しい表現手段で飛び出す巨大3D像の体験を実現しました。

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