1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. プレスリリース

ヒトとマウスでは違う?  卵子・初期胚で働くヒトDPPA3によるUHRF1の機能阻害機構を解明

Digital PR Platform / 2024年6月21日 10時0分



 研究グループは、これまでにマウスDPPA3とマウスUHRF1の複合体構造を溶液NMR法*5で決定し、詳細な結合様式からDPPA3によるUHRF1の機能阻害機構を明らかにしました (横浜市立大学プレスリリース:卵子形成に必須なタンパク質DPPA3によるUHRF1の機能阻害の分子機構を解明:https://www.yokohama-cu.ac.jp/news/2022/202211arita_nar.html
、Hata et al., Nucleic Acids Research 2022)。しかし、DPPA3は特定の立体構造を取らない天然変性タンパク質*6であり、マウスとヒトではアミノ酸配列の保存度が非常に低いことがわかっていました。従って、ヒトDPPA3がマウスDPPA3と同じような働きでUHRF1の機能を阻害するかどうかは不明でした。









研究内容
 研究グループはまず、以前の研究で明らかにしたマウスDPPA3:UHRF1複合体構造をもとにして、ヒトDPPA3のC末端領域とヒトUHRF1 PHD finger*7が相互作用に重要であることを明らかにしました。しかし試験管内での実験から、マウスDPPA3はUHRF1 PHD fingerに非常に強く結合しますが、ヒトDPPA3はマウスDPPA3に比べてUHRF1 PHD fingerとの結合が約30倍も弱いことがわかりました。この相互作用の強さの違いを調べるために、X線結晶構造解析法でヒトDPPA3とヒトUHRF1 PHD fingerの複合体構造を2.45Å分解能で決定しました。以前に報告したマウスDPPA3:UHRF1 PHD finger複合体では、DPPA3間で保存されたアミノ酸配列であるVal-Arg-Thr (VRT) 配列に加えて、そのC末端の2本のα-ヘリックス*8構造がUHRF1 PHD fingerと相互作用し、強固な結合を実現していました。今回決定したヒトDPPA3とUHRF1 PHD fingerの構造では、ヒトDPPA3のVRT配列はマウスDPPA3と同じ様式で相互作用に寄与していました。しかし、ヒトDPPA3のC末端にはα-ヘリックスは1本しか形成されていませんでした。また、このヒトDPPA3のα-ヘリックスはUHRF1 PHD fingerとの相互作用には直接的に関与していないことがわかりました。これにより、マウスDPPA3に比べてヒトDPPA3はUHRF1 PHD fingerとの相互作用面積が少なく、このことがヒトDPPA3とマウスDPPA3の結合の強さに反映されていることがわかりました。
 さらにヒトDPPA3によるUHRF1の機能阻害を調べるために、アフリカツメガエルの卵抽出液を用いた解析を行いました(東京大学 西山敦哉准教授との共同研究)。その結果、マウスDPPA3はUHRF1のクロマチン局在を阻害し、DNAメチル化を抑制する働きがありました。しかし、ヒトDPPA3はUHRF1のクロマチン局在をあまり阻害できず、DNAメチル化の抑制もほとんどできないことがわかりました。これらの結果から、ヒトDPPA3はUHRF1の機能阻害を起こす十分な働きを発揮できず、卵子や初期胚ではヒトDPPA3はマウスDPPA3とは異なる分子機構でUHRF1の機能阻害を起こすことが示唆されました。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください