ヒトとマウスでは違う? 卵子・初期胚で働くヒトDPPA3によるUHRF1の機能阻害機構を解明
Digital PR Platform / 2024年6月21日 10時0分
今後の展開
本研究では、卵子形成や生殖に必須なヒト由来DPPA3とUHRF1の相互作用様式について、X線結晶構造解析法を用いて構造生物学的な観点から解明しました。さらに、これまでにマウスで得られていた知見とは異なるメカニズムで、ヒトDPPA3がUHRF1の機能阻害をする可能性を提唱しました。それでは、ヒトDPPA3はどのような機構でUHRF1の機能阻害をするのでしょうか? 興味深いことに、アミノ酸配列の解析からヒトDPPA3はマウスDPPA3よりも液-液相分離*9を起こしやすいことが示唆されました。このことから、液滴という特殊な環境下でヒトDPPA3はUHRF1の機能阻害を起こす可能性が考えられます。また、天然変性タンパク質は翻訳後修飾*10を受けやすいことから、ヒトDPPA3とマウスDPPA3では異なる翻訳後修飾が導入されることで、その機能が制御される可能性が考えられます。
今後、ヒトDPPA3の液滴形成能や翻訳後修飾を解析し、その細胞機能を明らかにすることで、卵子形成や生殖の基本原理の理解、DPPA3やUHRF1の制御不全が起こす不妊の原因に関する知見が得られることが期待されます。
研究費
本研究は、JSPS科研費 新学術領域「多様かつ堅牢な細胞形質を支える非ゲノム情報複製機構(19H05741)」、「ケモテクノロジーが拓くユビキチンニューフロンティ(19H05294,19H05285)」、基盤研究B「DNAメチル化酵素の包括的な理解に向けた構造生命科学研究とその応用(24K01967)」をはじめ、横浜市立大学学長裁量事業 戦略的研究推進事業などの助成を受けて行われました。
論文情報
タイトル: Structure of human DPPA3 bound to the UHRF1 PHD finger reveals its functional and structural differences from mouse DPPA3
著者:Nao Shiraishi, Tsuyoshi Konuma, Yoshie Chiba, Sayaka Hokazono, Nao Nakamura, Md Hadiul Islam, Makoto Nakanishi, Atsuya Nishiyama, Kyohei Arita
掲載雑誌:Communications Biology
DOI:https://www.nature.com/articles/s42003-024-06434-9
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