麻布大学の水野谷航准教授らの研究グループが魚油に含まれるエイコサペンタエン酸(EPA)が脂質燃焼型の抗疲労性筋線維を増加することを発見
Digital PR Platform / 2024年6月20日 14時5分
麻布大学(学長:川上泰、本部:神奈川県相模原市)獣医学部動物応用科学科の水野谷航准教授、北里大学獣医学部動物資源科学科の小宮佑介准教授および九州大学、京都大学、弘前大学、東海大学による共同研究グループは、魚油に含まれる脂肪酸の一種であるエイコサペンタエン酸(EPA)がラット骨格筋において、脂質代謝に優れ、抗疲労性の遅筋タイプ(※1)の割合を増加させることを見出しました。また、そのメカニズムとして核内受容体PPARδ(※2)およびAMPK(※3)シグナリングの活性化が関与していることも明らかにしました。この研究成果により、健康科学分野やスポーツ科学分野に貢献することができると考えられます。なお、本研究成果はiScience誌(Cell Press)の電子版にオープンアクセスジャーナルとして日本時間2024年5月14日に先行掲載されました。
■研究のポイント
・エイコサペンタエン酸(EPA)は核内受容体PPARδの高いアゴニスト活性を有する
・EPA摂取はラット骨格筋の遅筋タイプ割合を増加させる
・EPA摂取は全身の酸化的代謝を促進し、筋機能を向上する
・EPAは筋細胞のPPARδおよびAMPK経路を活性化する
■研究の内容と成果
骨格筋を構成する細胞である筋線維は代謝や収縮特性の違いから遅筋タイプ(type1)、速筋タイプ(type2B)および中間タイプ(type2A, 2X)に分類されます。筋線維タイプごとに性質が異なり、遅筋タイプの筋線維は収縮速度が遅く、ミトコンドリアを豊富に含み、脂質酸化能力に優れ、疲労しにくい特徴を持っています。一方の速筋タイプの筋線維は収縮速度が速く、解糖系能力に優れ、疲労しやすいです。中間タイプは、おおよそ両者の中間的な性質を有しています。このような特徴の違いから、筋線維タイプ構成は代謝特性と密接に関連しており、遅筋線維の増加は抗疲労性かつ脂質を燃焼しやすい体質づくりに貢献できます。研究チームは以前、食餌性の魚油摂取がラットにおいて筋線維タイプを遅筋方向へ移行することを報告しました(Mizunoya et al., 2013, PLoS ONE)。しかし、その詳細なメカニズムは明らかになっていませんでした。そこで、本研究では魚油に含まれる特徴的な脂肪酸に着目し、ラットの骨格筋線維タイプ、骨格筋機能や全身代謝に対する作用やその機序を明らかにすることを目的としました。
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