麻布大学の水野谷航准教授らの研究グループが魚油に含まれるエイコサペンタエン酸(EPA)が脂質燃焼型の抗疲労性筋線維を増加することを発見
Digital PR Platform / 2024年6月20日 14時5分
まず、魚油に含まれる代表的なオメガ3脂肪酸であるエイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)を含む様々な脂肪酸を用いて、遅筋タイプ形成や骨格筋の脂質代謝に関連しているPPARδのアゴニスト活性を調べました。その結果、EPAに合成PPARδアゴニストに匹敵するほどの高いアゴニスト活性があることがわかりました。一方でDHAではこの活性は確認されませんでした。
そこでEPAに着目し、ラットにEPAを4週間投与しました。まずは呼気ガス計測装置を用いて全身代謝を測定したところ、EPA投与区で対照区と比較して酸素消費量が有意に増加しました。また、麻酔下での脛骨神経への電気刺激により発生する後肢ふくらはぎ筋の最大発揮張力を測定した結果、EPA投与区で有意に高い値を示し、筋持久力も有意に向上しました。すなわち、EPA投与はラットのエネルギー代謝を亢進し、筋機能も向上させることがわかりました。
次に、これらのEPAによる作用に筋線維タイプの変化が関与しているかを調べました。長趾伸筋からタンパク質およびtotal RNAを抽出し、遅筋タイプマーカーであるミオシン重鎖(MyHC)1の発現量を解析しました。その結果、EPA投与区でタンパク質、mRNAレベル両方で対照区と比較して、有意に発現量が増加しました。免疫組織化学染色で足底筋の筋線維タイプ組成を調べた結果、上記と同様にEPA投与区でMyHC1陽性筋線維の割合が有意に増加しました。
最後に、エイコサペンタエン酸が筋細胞で遺伝子や代謝物にどの様な影響を与えているかを確かめるために、EPA添加が培養筋管細胞における遺伝子および代謝物にどのような影響を与えるか網羅的解析(RNA-seqおよびメタボローム解析)を行いました。その結果、EPA添加は筋細胞のPPARδおよびAMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)経路を活性化することが明らかになりました。これに加え、脂質をエネルギー源として有酸素系の代謝経路であるTCAサイクルを活発にすることも示唆されました。
以上より、研究チームは魚油に含まれるEPAの新規機能性として「骨格筋の遅筋線維割合を増加し、全身脂質代謝・筋機能を向上する」ことを明らかにしました。本研究の成果は、古くから知られていた魚油摂取が脂肪燃焼を促進する理由の一端を解明するとともに、魚油摂取が脂質燃焼作用の亢進や抗疲労性体質の獲得といった運動トレーニングと類似した効果を引き起こすことを明らかにしました。上記の成果は健康科学分野やスポーツ科学分野に貢献できると考えています。
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