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【自閉スペクトラム症進行のモニタリングや治療薬の有効性評価に期待】脳由来神経栄養因子BDNFの産生障害と自閉症との関係を解明し新たな自閉症診断マーカーを提唱--金沢工業大学、富山大学、藤田医科大学など

Digital PR Platform / 2024年6月24日 14時5分



【DOI】
10.1038/s41380-024-02595-5
https://doi.org/10.1038/s41380-024-02595-5

【本共同研究の背景】
疫学研究によると、世界における自閉症の有病率は1%に達しており、この障害は子どもたちの心身の健康の大きな脅威となっています。自閉症の子どもたちが確かな治療介入を受けられなかった場合、生涯にわたる心身の健康、社会的交流、学習、自立した生活、就労に影響することになり、長期的なケアとサポートは家族に大きな負担を強いることになります。

近年の遺伝学的研究では、自閉症発症に関連する変異遺伝子として、FMR1、SHANK3などが報告されており、遺伝子変異や染色体異常と自閉症の発症の関係性を強く示唆しています。そしてこれらの変異遺伝子に共通する特徴は、神経伝達を行うシナプスの構造と機能に影響しているという点にあります。

興味深いことは、これらの遺伝子変異を持つモデル動物を作製すると、反復行動や社会的相互作用の障害など、自閉症患者様表現型が観察されることです。さらに重要なことは、これらのモデル動物のほぼすべてが、シナプス密度の変化、シナプスタンパク質合成の異常、シナプス可塑性の障害など、シナプスの機能と構造に欠陥を示すことです。つまりこれらのモデル動物の所見は、脳内シナプスの構造と機能の異常が自閉症発症の重要要因であることを強く示唆しています。

遺伝的要因に加えて、環境要因も指摘されています。出生前の感染症や薬物使用と環境的暴露は、神経シナプスの発達と機能に影響して、自閉症発症リスクを高める可能性があります。

ASDを治療する特効薬がないことを考えると、その研究を深めることは特に重要かつ喫緊の課題といえます。これは、早期スクリーニング、診断、介入を実現するだけでなく、患者の予後を最適化し、生活の質を向上させ、家族や社会の負担を軽減し、精密な薬剤戦略を開発するための強固な基盤を築くことにもつながります。

ASDの発症において遺伝的要因が重要な役割を果たしているにもかかわらず、ASD患者の多くは明確な家族歴がないため、研究がより複雑になっています。特定の遺伝子変異に限定された従来のASDの動物モデルは、ASDの複雑な多様性を完全に模倣することができず、ASDの病因と治療戦略の研究を制限しています。

【本共同研究の成果について】
金沢工業大学の小島正己教授は、清華大学(中国北京市)のBai Lu教授、首都医科大学付属北京天壇病院(中国北京市)のFeng Yang教授、富山大学(富山県富山市)の高雄啓三教授、藤田医科大学(愛知県豊明市)の宮川剛教授、前橋工科大学(群馬県前橋市)の石川保幸准教授をはじめとする研究チームによる共同研究を行い、新たな自閉症モデルマウスと自閉症診断バイオマーカー候補を見出し、精神疾患研究の専門誌Molecular Psychiatry誌にその成果論文を発表しました。

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