【名城大学】機能性が強化された次世代型アスタキサンチンの開発へ!~効率的かつ化学薬品不使用のカロテノイド異性化技術を確立~
Digital PR Platform / 2024年7月5日 20時5分
名城大学総合学術研究科/理工学部/疾患予防食科学研究センターの本田 真己 准教授、Ghosh Antara 研究員と富士化学工業株式会社LS開発本部の西田 康宏 研究員、坂口 莉奈 研究員らのグループは、高い健康効果が期待されるシス型アスタキサンチンを効率的に製造する技術を開発しました。本研究成果は、2024年 6月 27 日にElsevier社が出版する国際学術誌の「Food Bioscience」に掲載されました。
【本件のポイント】
・有機溶媒や重金属触媒などの化学薬品を一切使用せずに、効率的にトランス型アスタキサンチンエステルをシス型(図1)に変換することに成功。
・加熱式のフローリアクターを用いることで、従来法と比較して反応時間を大幅に短縮することに成功。
・シス型アスタキサンチン(エステル体)は高い保管安定性を有することを実証。
・従来品よりも高い健康効果(加齢性疾患予防や肌質改善作用など)を有するアスタキサンチン素材の応用展開に期待。
【背景】
天然色素のカロテノイドの一種であるアスタキサンチンは、強力な抗酸化作用を有し、加齢性疾患の予防効果を示すことから、食品や化粧品分野での需要が急速に拡大しています。しかし、流通しているアスタキサンチン(トランス型)は体内吸収性が低いことに加え、結晶性が高く油脂に溶解しにくいなど加工適性が悪いという欠点があります。近年、アスタキサンチンの二重結合の一部を「シス型」に異性化すると、体内吸収性や生理活性(抗老化作用や抗炎症作用、肌質改善作用など)が向上し、物性が変化する(結晶性の低下や溶解度の向上など)ことが明らかになり、注目を集めています。そのため、高い吸収性をもち、加工適性に優れるシス型を用いることが好ましいですが、シス型は天然資源として稀有で不安定なため、工業的に製造することが困難です。本研究グループは、ヘマトコッカス藻由来のアスタキサンチンエステルを効率的にシス型に異性化する技術を開発し、その素材化を目指して研究開発を推進しています。
【研究内容】
カロテノイドの異性化反応は加熱や光照射、触媒添加により進行することが報告されています。加熱による異性化は食品や化粧品の製造工程と親和性が高い方法ですが、反応効率が低く、通常媒体として有機溶媒などの化学薬品の使用が必要です。本研究では、媒体に可食性の油脂(ヘマトコッカス藻由来の脂質成分や植物油)を用い、加熱式のフローリアクターを用いて高温・短時間処理することで、アスタキサンチンエステルの分解を抑制しながら短時間(30秒以内)でシス型に異性化できる技術を開発しました(図2)。
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