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発生・発がんを制御するHedgehogシグナルの新たな活性化機構と責任分子(リン酸化酵素:DYRK2)を同定

Digital PR Platform / 2024年7月9日 10時26分


【用語説明】

(注1) Hedgehog(Hh)シグナル
正常な組織発生に必須で、ショウジョウバエからヒトまで進化的に保存されたシグナル系。哺乳類では、受容体が一次繊毛上に存在し、一次繊毛に強く依存した伝達様式を示す。組織発生だけでなく、生後は発がんにも関与する。

(注2) Smoothened (SMO)
Hedgehogシグナルの活性化に関わり、構造類似性からGタンパク質共役受容体(GPCR)に分類される7回膜貫通タンパク質。Hedgehogリガンドが別の膜貫通型タンパク質であるPatchedに結合することで、SMOが一次繊毛にリクルートされる。FDAで承認されている現行のHedgehog阻害薬(Vismodegib, Sonidegib)の標的分子である。

(注3) オミックス(omics)解析
生体内分子を網羅的に解析すること。本研究では、転写物mRNAを対象とする「トランスクリプトーム」、ならびに、タンパク質を中心とした生体内分子間の相互作用を対象とする「インタラクトーム」を実施。

(注4) 一次繊毛
ほぼ全ての細胞に存在する突起状の細胞小器官(オルガネラ)。Hedgehogシグナルを含む、多くの受容体が局在し、細胞が外部環境を感知するアンテナとしての機能を担っている。


研究の詳細

【背景】
Hedgehog(Hh)シグナルは、発生過程において重要な役割を担います。その異常な活性化は、奇形疾患のみならず、広域ながん種において、発がんを促進することが知られています。特に、基底細胞がんや小児の希少がんである髄芽腫は、代表的なHedgehogシグナル依存性のがんとして理解されています。
現在、抗がん剤としてHedgehogシグナル阻害薬であるVismodegib (2012年承認)とSonidegib (2015年承認)が 、 FDAで承認されています。これら現行薬は、Gタンパク質共役受容体であるSmoothened (SMO)を標的とし、強力な抗腫瘍効果を示します。しかし、投与患者の約20%において、数年以内に「薬剤耐性かつOncogenicなSMO遺伝子変異」を誘導することが明らかになってきました。したがって、これら現行薬不応の変異を有する患者に対しても、有効な治療薬の開発が求められています。


Hedgehogシグナル経路のブラックボックス
Hedgehogシグナルの中核的な制御は「転写因子GLI2/GLI3」が担っています。これまでの研究から、Hedgehogシグナルの「抑制機序」は分子レベルで詳細に解明されてきました。しかし、「活性化機序」は不明な点が多く、特に、活性化したSMOの下流で、GLI2/GLI3を活性型に変換する機序、ならびにその責任分子は未解明であり、ブラックボックスとして提唱されていました。
ブラックボックスであるSMO下流のHedgehogシグナル活性化機構とその責任分子の解明が、SMOの変異に依存しない新たなHedgehog阻害薬の創薬シーズを生み出すと考えられます。

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