肝臓の線維化マクロファージが作られる機序を解明~代謝障害関連脂肪肝炎の新規治療法の開発に期待~
Digital PR Platform / 2024年7月24日 14時5分
研究内容と成果
MASHモデルにおける線維化マクロファージの分化に関わる転写因子を同定するために、MASHを誘導した肝臓マクロファージで強発現する遺伝子を選び出しました。そのような遺伝子の中でも、肝臓に浸潤後の単球とマクロファージにおいて、最も強発現する転写因子Egr2に着目しました (図1A)。単球やマクロファージ選択的にEgr2を欠損したマウスを作製し、このマウスのMASH誘導後の肝線維化レベルを評価したところ、Egr2欠損マウスでは、肝臓組織におけるコラーゲン量や、線維化関連遺伝子 (Timp1とCol1a1) 発現レベルが顕著に減少し、肝線維症が改善することが分かりました (図1B)。この結果は、単球やマクロファージでのEgr2発現が、MASHにおける線維化の病態増悪に重要な役割を果たしていることを示します。
次にEgr2欠損マウスにおいて肝線維化が改善した理由を明らかにするため、MASH誘導時の肝臓の単球やマクロファージの構成や性質を評価しました。その結果、Egr2欠損マウスでは、肝臓免疫細胞における単球やマクロファージの割合は野生型と同程度でしたが、線維化マクロファージ (SAMやhLAM)のマーカー遺伝子 (Spp1やCd9など)発現が著明に減弱していることがわかりました。一方、Egr2欠損マウスで発現が亢進した遺伝子群には、肝常在マクロファージ(クッパー細胞とも呼ばれる)のマーカー遺伝子 (Clec4fやIl18bpなど)が含まれていました。以上より、Egr2は、MASH誘導時の肝臓に浸潤した単球から線維化マクロファージへの分化に関与している可能性を考えました。
この仮説を検証するため、野生型マウスとEgr2欠損マウスにおける、単球からマクロファージへの分化経路の変化を一細胞RNAシークエンス解析で調べました (図2)。野生型マウスでは、単球がSpp1やCd9を高発現する線維化マクロファージへ分化するのに対し、Egr2欠損マウスでは、線維化マクロファージへの分化が阻害され、線維化マクロファージともクッパー細胞とも異なるマクロファージ集団へ分化することがわかりました。この亜集団はクッパー細胞と異なり単球から分化しますが、その性質がクッパー細胞と類似することから単球由来クッパー細胞と呼ばれています。以上の結果は、Egr2が、肝臓に浸潤した単球から線維化マクロファージへの分化に重要な役割を担うことを示します。
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