窒素原子置換によるわずかな差で空間と水素・電子輸送物性を精密コントロール
Digital PR Platform / 2024年8月9日 14時0分
―高いプロトン伝導性と化学的安定性を併せ持つジアザピレンCOFの合成に成功―
概要
京都大学大学院工学研究科分子工学専攻 Li Zhuowei氏(博士課程3年)・常行 恭弘氏(修士課程2年・当時)・Paitandi Rajendra氏(日本学術振興会研究員)・筒井 祐介助教・田中 隆行准教授・鈴木 克明助教・梶 弘典教授・Samrat Ghosh氏(日本学術振興会研究員)・関 修平教授らのグループは、名古屋大学大学院工学研究科有機・高分子化学専攻 仲里 巧氏(修士課程2年・当時)・小田原 正浩(修士課程2年・当時)・三宅 由寛准教授(現兵庫県立大学教授)・忍久保 洋教授、および横浜市立大学大学院生命ナノシステム科学研究科 高木 牧人特任助教・島崎 智実准教授・立川 仁典教授と共同で、高いプロトン伝導性と高い化学的安定性を両立する高結晶性の共有結合性有機構造体(COF)の形成に成功しました。
二次元に拡がったCOFは、その平面内の電子共役に加えて、結晶性固体になる際の平面の重なり方によっても物性が大きく異なります。COFの特徴として、用いる分子ユニットの選択で平面内電子共役を制御することが可能ですが、一方でその重なり方の緻密な制御は困難でした。従来用いられていたピレン骨格は、COFに必要な高い結晶性を与えるユニットとして知られていました。しかし、このユニットに由来する骨格のねじれが、積層構造の制御とそれに由来するさまざまな物性の精密制御の足かせとなっていました。
本研究では、ピレンユニットの2つの炭素原子を窒素原子で置換したジアザピレンに変えることで、C-H結合の有無というわずかな差だけで二次元平面性と三次元積層距離が異なることを発見しました。また、ジアザピレンCOFが極めて高いプロトン伝導特性を示すことを明らかにしました。本研究成果は、米国の国際学術誌「Journal of the American Chemical Society」に2024年8月8日(現地時間)に掲載されました。
[画像1]https://digitalpr.jp/simg/1706/92807/550_386_2024080213485966ac653bb5ac5.jpg
図1. ピレンがジアザピレンに置き換わることで、中心部分と周囲のフェニル基(クリーム色で彩色)との間の角度が53°から39°へと変化してより平面的な構造となり、積層した際の三次元構造ではCOF間の距離が縮まる。
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