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機械学習により有望物質群とその設計指針を抽出

Digital PR Platform / 2024年8月7日 10時0分

機械学習により有望物質群とその設計指針を抽出

-所望の特性を持つ無機材料のパターンを自動検出する手法を開発-


【要点】

無機材料データから所望の光学特性を持つ物質群に共通な特徴を検知
機械学習予測モデルに基づいたクラスタリングにより物性を考慮した物質分類を実現
マテリアルズインフォマティクスにより物質・材料科学的な知識を獲得

【概要】
 東京工業大学 科学技術創成研究院 フロンティア材料研究所の佐藤暢哉研究員(研究当時)、高橋亮助教、清原慎JSPS特別研究員(研究当時。現:東北大学 助教)、大場史康教授は、横浜市立大学大学院生命医科学研究科の寺山慧准教授、物質・材料研究機構 マテリアル基盤研究センターの田村亮チームリーダーと共同で、無機材料の分類および設計指針抽出のための新たな機械学習手法を開発した。
 所望の材料機能の発現の鍵となる構成元素や原子配列の特徴を見出すことは、材料設計指針の構築や機能発現機構の解明において重要である。本手法は、機械学習の物性予測モデルに基づいて物質の分類を行うことにより、物質群・物性の種類を問わず、任意の無機材料データから所望の物性に応じて有望な物質のパターンを抽出することを可能にした。これにより、1,000種類以上の物質を含む無機材料データから各エネルギー領域のバンドギャップを持つ物質や、広いバンドギャップと大きい屈折率を両立する物質に共通な特徴を事前知識無しに自動的に検知することに成功した。本手法によりマテリアルズインフォマティクス(用語1)を用いた物質・材料科学的な知識の獲得が明確・容易になり、さまざまな無機材料の研究・開発や学理構築が加速されることが期待される。
 本研究成果は8月5日付(現地時間)で「Advanced Intelligent Systems」誌に掲載された。

●背景
 材料科学分野では、物質の構成元素や原子配列の特徴に着目し、一定の基準において物質をさまざまな物質群に分類することが頻繁に行われてきた。例えば金属と酸素の化合物であるシリカ(SiO2)やアルミナ(Al2O3)は酸化物という物質群にまとめられ、窒化物や硫化物などと区別して取り扱われる。また価電子構造に基づいたII-VI族半導体(CdTe、ZnSe、ZnOなど)、III-V族半導体(GaAs、GaP、GaN、AlNなど)といった分類や、結晶構造の観点で岩塩型構造やペロブスカイト型構造といった分類を用いながら、材料設計指針や機能発現機構についての議論が行われてきた。一般に材料設計指針や機能発現機構について考える際に、あらかじめ有望な物性を持つ物質群やその構成元素・原子配列の特徴を知ることができれば有益である。
 ある機能を発現する鍵となる特徴や望ましい機能を持つ有望物質群は、想定している物性(例えば電気特性、光学特性、磁気特性、力学特性)や、材料の用途(電子材料、光学材料、磁性材料、構造材料など)に応じてさまざまである。したがって構成元素・結晶構造のどういった特徴・基準を用いるかについて無数の分類法が考案されており、所望の機能発現の鍵となる物質の構成元素・原子配列の特徴と、有望な物質群をその都度見出すことが必要となる。
 一方で、近年は機械学習がさまざまな分野で爆発的に流行しており、材料科学分野も例外ではない。最も典型的な応用の一つは、物質の化学式や結晶構造から物性を高速に予測することであり、ここ20年ほどで非常に多くの研究例がある。このような研究では多数の物質について物性値を算出した結果をまとめた第一原理計算(用語2)データベースがよく使われる。さらに最近では、機械学習によりデータを解釈・説明する手法も流行しており、大規模データから構成元素や結晶構造の特徴と物性の関連性を人間が理解できる知識として抽出するための手法も提案されている。例えば、クラスタリング(用語3)と呼ばれるデータ分類法を用いると、あらかじめ人間が選択した特徴量(用語4)について類似した物質群の分類が可能となる。しかし、通常のクラスタリング手法を適用した場合、あらかじめ構成元素・原子配列の特徴量を選択する必要があるため、上述したような用途に応じた物質分類を事前知識無しに行うことができないという問題がある。そこで本研究では、機械学習による物性・機能予測とクラスタリング手法を融合させることで、専門的な事前知識を必要とせずに、想定している物性と物質の構成元素・原子配列に基づいて合理的かつ自動的に物質群の分類を定義する手法を開発することとした。

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