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エイコサペンタエン酸が心筋細胞の機能を正常化させる仕組みを発見 食事による不整脈の予防法開発に期待

Digital PR Platform / 2024年8月6日 20時5分

【本件の内容】
研究グループは、マウスの心臓から心筋細胞を取り出し、心房細動が誘発される際と同程度の飽和脂肪酸を添加することで、心房細動患者の心房筋でみられる現象と類似した状態を再現しました。その培養細胞にEPAを添加したところ、飽和脂肪酸により生じる酸化ストレスを除去し、心筋細胞の拍動を正常化させることがわかりました。また、EPAは細胞内の心筋の電気活動の制御に関わる因子の発現を、遺伝子・タンパク質ともに正常化させることがわかりました。
本研究の成果から、飽和脂肪酸とEPAの同時摂取は、高脂肪食など飽和脂肪酸を過剰に含む食事の摂取により生じた異常を正常化し、心筋細胞に対し保護的な作用を示す可能性が示唆されました。これまで不整脈をコントロールする技術や薬剤はありましたが、不整脈を予防する方法は確立されておらず、本研究成果は、食事により不整脈を予防する方法の開発に繋がると期待されます。

【論文概要】
掲載誌:International Journal of Molecular Sciences
    (インパクトファクター:4.9@2022)
論文名:
Eicosapentaenoic Acid Rescues Cav1.2-L-Type Ca2+ Channel Decline Caused by Saturated Fatty Acids via Both Free Fatty Acid Receptor 4-Dependent and -Independent Pathways in Cardiomyocytes.
(エイコサペンタエン酸は飽和脂肪酸によるL型Ca2+チャネルの発現低下を遊離脂肪酸受容体4依存的、非依存的経路を介して回復させる)
著者 :森島真幸1,2*、Pu Wang3、堀井鴻佑2、堀川一樹4、小野克重3,5*
    *責任著者
所属 :1 近畿大学農学部食品栄養学科、2 近畿大学大学院農学研究科、3 大分大学医学部病態生理学講座、4 徳島大学先端研究推進センター、5 大分下郡病院
DOI :10.3390/ijms25147570
URL :https://doi.org/10.3390/ijms25147570

【研究の詳細】
研究グループは、マウスの心臓から心筋細胞を単離し、不整脈(心房細動)が誘発される際の血中脂質濃度と同等の濃度の飽和脂肪酸を細胞培養液に添加しました。その結果、通常培養した心筋細胞では、心臓の拍動と同じリズムで自動拍動する細胞がみられますが、飽和脂肪酸を添加した心筋細胞では、脂肪酸の濃度依存的に自動拍動の減弱がみられました。拍動が減弱した心筋細胞では、活性酸素種(Reactive oxygen species ; ROS)※5 の産生亢進や心筋の電気活動を担うL型Ca2+チャネル※6 遺伝子・タンパク質の発現低下、L型Ca2+電流の低下がみられ、持続性心房細動患者の心房筋でみられる現象と類似した反応を確認できました。
次に、EPAによる予防効果を検証するために、飽和脂肪酸を添加する際にEPAを同時に細胞培養液に添加したところ、飽和脂肪酸により誘導される細胞傷害に対し、EPAは保護的にはたらくことがわかりました。さらに、EPAが心筋細胞にどのように作用するのかを解析するため、EPA等の多価不飽和脂肪酸が細胞に作用する際に結合する受容体である、遊離脂肪酸受容体(FFAR4)について検証しました。その結果、単離した心筋細胞には比較的豊富にFFAR4が発現しており、EPAはFFAR4を介する経路で細胞内Ca2+濃度の制御に関わるL型Ca2+チャネルの発現を正常化させることがわかりました。その一方で、受容体を介さずに細胞内へ入り活性酸素種の産生を抑制し、L型Ca2+チャネルの発現を正常化させる経路が存在することも初めてわかりました。
本研究の成果から、飽和脂肪酸を豊富に含む不適切な食事の摂取が不整脈を起こす機序として、心筋細胞内での活性酸素種の過剰産生とL型Ca2+チャネルの発現異常が関与していること、そして、EPAの同時摂取はこれらを正常化し、心筋細胞に対して保護的な作用を示す可能性があることが示唆されました。また、EPAの心筋保護作用には多価不飽和脂肪酸の選択的受容体であるFFAR4が重要な役割を担うことを初めて明らかにしました。
これまでに、FFAR4をターゲットとした不整脈の治療や予防方法は発表されておらず、本研究は非常に新規性が高いと考えられます。また、これまでに多くの優れた医学研究により、発症してしまった不整脈をコントロールする技術や薬剤は確立されてきましたが、不整脈の発症を未然に防ぐ一次予防方法は未だ確立されていないため、本研究成果は食品由来成分の機能性を活用し、生活習慣病の発症・重症化予防に向けた、新しい栄養管理法の開発に繋がることが期待されます。

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