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マラリアを媒介する蚊へのネオニコチノイド系殺虫剤の作用機構を解析 有効な殺虫剤の開発による、マラリア・デング熱の感染抑制に期待

Digital PR Platform / 2024年8月6日 20時5分

マラリアを媒介する蚊へのネオニコチノイド系殺虫剤の作用機構を解析 有効な殺虫剤の開発による、マラリア・デング熱の感染抑制に期待



近畿大学農学部(奈良県奈良市)応用生命化学科教授・近畿大学アグリ技術革新研究所所長 松田一彦らの研究グループは、大阪大学産業科学研究所(大阪府茨木市)、岡山大学薬学部(岡山県岡山市)、ロンドン大学、リバプール熱帯医学校と共同で、マラリアを媒介するガンビエハマダラカ※1 に対する、ネオニコチノイド系殺虫剤※2 の作用機構を解析しました。また、ネオニコチノイド系殺虫剤がガンビエハマダラカの飛翔能力を阻害するメカニズムの推定にも成功しました。本研究成果は、ガンビエハマダラカの防除に有効な殺虫剤の開発を促し、マラリアだけでなく、デング熱の抑制にもつながることが期待されます。
本件に関する論文が、令和6年(2024年)7月24日(水)に、遺伝学やゲノミクスに関する国際的な学術誌"Open Biology(オープン バイオロジー)"に掲載されました。





【本件のポイント】
●ガンビエハマダラカに対する、ネオニコチノイド系殺虫剤の作用機構を解析
●ネオニコチノイド系殺虫剤がガンビエハマダラカの飛翔能力を阻害するメカニズムを解明
●ガンビエハマダラカの防除に有効な殺虫剤の開発を促し、マラリアだけでなく、デング熱の感染抑制にも活用できる研究成果

【本件の背景】
マラリアはアフリカを中心に蔓延する感染症で、年間2億人以上が感染し、そのうち約60万人が亡くなっています。マラリアは、ガンビエハマダラカによる吸血を介して、マラリア原虫が体内に侵入することで発症します。
マラリアへの対抗策として、ワクチン投与による化学療法、殺虫剤を処理した蚊帳の設置、原虫を仲介する蚊の殺虫剤散布などが挙げられ、そのなかで特に殺虫剤は効果があるとされています。しかし一方で、世界的に使用されている合成ピレスロイド等の殺虫剤に対する抵抗性を獲得したガンビエハマダラカが増加し、その影響で感染者数が増加しています。そのため、世界保健機構を中心に、ピレスロイドとは作用機構が異なる「ネオニコチノイド系殺虫剤」を、ガンビエハマダラカなどのマラリア媒介昆虫種の防除に利用する方法が検討されています。しかし、ガンビエハマダラカに対するネオニコチノイド系殺虫剤の作用メカニズムは明らかになっていません。

【本件の内容】
ネオニコチノイド系殺虫剤は、昆虫の中枢神経に存在するニコチン性アセチルコリン受容体※3 の機能を阻害することで行動に影響を与え、殺虫効果をもたらします。研究グループは、令和2年(2020年)に、ニコチン性アセチルコリン受容体の異所発現技術※4 を開発しました。
本研究では、この異所発現技術を用いて、ガンビエハマダラカの神経伝達に重要な13種のニコチン性アセチルコリン受容体のサブタイプ※5 に対する、6種類のネオニコチノイド系殺虫剤の作用メカニズムを解析しました。その結果、受容体のサブタイプごとに6種類の殺虫剤の効き方が異なることを見出し、うち1種類の殺虫剤については、受容体に対する結合のメカニズムを結晶構造により明らかにしました。
ネオニコチノイド系殺虫剤は、ガンビエハマダラカの雌成虫に対して、飛翔能力を阻害するノックダウン活性を示します。研究グループは、このノックダウン活性が作用する際に、特に強く影響を受けるニコチン性アセチルコリン受容体のサブタイプを推定することにも成功しました。
本研究成果は、ガンビエハマダラカの防除に有効な殺虫剤の開発を促し、マラリアの抑制のみならず日本での拡大が懸念されるデング熱の抑制にも利用可能であると期待されます。

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