【東京医科大学】真菌標的型ドラッグデリバリーシステムを開発 ~難渋する真菌症の薬物治療への応用に期待~
Digital PR Platform / 2024年8月21日 20時5分
4. 真菌感染カイコモデルを用いた治療実験
最後に、真菌感染カイコモデルを用いた治療実験を行いました。DDSデバイスを利用した真菌標的型DDSアムホテリシンBは、アムホテリシンB単独よりも低濃度で生存率の有意な向上が確認されました(図4)。
【今後の研究展開および波及効果】
本研究で開発した真菌標的型DDSデバイスの使用により、既存薬または新規抗真菌薬の有効性・安全性を向上させることができ、深在性真菌症の治療成績の改善が期待できます。さらにDDSデバイスは修飾の柔軟性を有していることから、今回搭載したデクチン-1分子を他の病原体抗原特異的分子に変更することで、真菌以外の病原体をターゲットとするDDSデバイスが創出でき、様々な感染症治療への応用が期待されます。
【掲載誌名・DOI】
掲載誌名:Journal of Drug Delivery Science and Technology
DOI:https://doi.org/10.1016/j.jddst.2024.106073
【論文タイトル】
A Novel Fungal-Targeted Drug Delivery System Dectin-1-Targeted-PEG-Amino Acid Polymer Block Enhances Antifungal Activity and Reduces Cytotoxicity of Amphotericin B
【著者】
Tatsuya Inukai, Pengwen Chen, Hiroko Kokuba, Horacio Cabral, Shigeki Nakamura*
(*:責任著者)
【主な競争的研究資金】
日本学術振興会科研費 若手研究 (研究代表者 犬飼達也 24K19271 )
【用語説明】
※1 病原真菌:真菌は、カビを含む生物群の分類学上の名称であり、細菌とは異なります。およそ10万種程度知られており、アスペルギルス属、カンジダ属を代表としたヒトにアレルギーや感染症など健康障害を生じる真菌を病原真菌とよばれています。
※2 ドラッグデリバリーシステム(DDS):薬物の体内動態を制御できる技術であり、薬効を最大限に発揮させ、副作用を低減させることを達成させる薬物送達技術のことです。
※3 アムホテリシンB:真菌細胞膜のエルゴステロールと結合することで、細胞膜を不安定化させることにより、菌体内成分を漏出させることによって抗真菌作用をあらわします。真菌に対して優れた抗真菌作用がある一方で、ヒト細胞膜のコレステロールにも結合性を示すことから細胞への傷害性が高く、腎機能障害等の副作用が知られています。
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