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超解像顕微鏡が解き明かす染色体凝縮の仕組み

Digital PR Platform / 2024年8月22日 14時0分

● 本研究の成果
 本研究では、まずヒト細胞の染色体のなかのヌクレオソームを特異的に蛍光標識する技術を開発しました(図1右)。そしてヌクレオソーム1個1個を観察できる超解像蛍光顕微鏡(5)を駆使し、分裂期染色体のなかの蛍光標識したヌクレオソームの動きを生きた細胞において観察しました。その結果、高度に凝縮した分裂期染色体においても、ヌクレオソームが揺らいでいることを見出しました。そしてこの染色体が凝縮する過程で、ヌクレオソームの揺らぎが次第に抑えられることが分かりました。また、コンデンシンは染色体の中心部分に存在し、染色体軸を作っています(図2左下)。コンデンシンを迅速に除去できる細胞を用いて解析した結果、コンデンシンは染色体の中心付近でクロマチンドメイン同士を「クリップ」のように結びつけ、ヌクレオソームの揺らぎを抑えていることが示唆されました(図2上段)。また、ヒストンのテール(尾部、図1左)を介したヌクレオソーム間の相互作用を薬剤で阻害すると染色体が脱凝縮するため、この相互作用も重要な役割を果たしていることも示されました(図2下段)。ヒストンのテールは、ヌクレオソーム同士の物理的な結びつきを強化し、染色体全体を凝縮させます。さらに、計算機上で再現されたモデル染色体において、コンデンシンの「クリップ」の働きや、ヌクレオソーム同士の相互作用を考慮することで、染色体を正しく構築することができました。本研究で得られたコンデンシンの「クリップ」の働きと、ヌクレオソーム同士の相互作用は、染色体が正確に娘細胞に分配されるための重要なメカニズムと考えられます。


[画像2]https://digitalpr.jp/simg/1706/93685/300_241_2024082212262366c6afdfbb393.png





図2:(上段)コンデンシンは、染色体の中心付近でクロマチンドメイン同士を「クリップ」のように結びつけ、ヌクレオソームの揺らぎを抑えている。(下段)ヒストンのテール(尾部)を介したヌクレオソーム間の相互作用を阻害すると染色体が脱凝縮する。ヌクレオソーム間の相互作用も重要な役割を果たしている。





 


これらの結果は、生きた細胞の染色体をナノメートルレベルで観察することができる顕微鏡により得られた新しい染色体像です(図3)。これまでの方法では、細胞を固定(6)する必要があり、ヌクレオソームの振る舞いの情報が失われてしまうという欠点がありました。今回明らかになった「ヌクレオソームの揺らぎ」は、コンデンシンなどの染色体を構築するタンパク質の染色体内部への侵入や染色体内の移動を促し、効率的な凝縮反応を可能にすると考えられます。このようなヌクレオソームの振る舞いは、がんの原因となる長いクロマチンの絡まり・切断を防ぎ、遺伝情報の維持に貢献することが予想されます。

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