パーキンソン病治療薬による意思決定障害に関わる神経メカニズムの解明
Digital PR Platform / 2024年9月6日 10時0分
〜 なぜ不合理な選択をしてしまうのか 〜
意思決定とは複数の選択肢から最適なものを選ぶ行為であり、ヒトの日常生活において重要な脳の働きです。食事、交通、買い物、金銭管理など様々な場面で意思決定を行いますが、時には暴飲暴食、浪費といった不合理な選択をしてしまうこともあります。持続的に不合理な選択をしてしまう状態を意思決定障害といいます。パーキンソン病治療薬を服用している患者さんでは、副作用として意思決定障害が高い頻度で認められ、治療を進めるうえで大きな問題となっています。しかしながら、パーキンソン病治療薬による意思決定障害の詳細なメカニズムは十分にわかっていませんでした。
藤田医科大学 精神・神経病態解明センター 神経行動薬理学研究部門の永井拓教授、窪田悠力助教と医学部 脳神経内科学の渡辺宏久教授らの研究グループは、ヒトにおいて意思決定能力の評価に用いられているアイオワギャンブリング課題※1をマウスの行動実験に応用し、淡蒼球外節※2と呼ばれる脳領域の活動亢進がパーキンソン病治療薬による意思決定障害に関わることを明らかにしました。本研究成果により、淡蒼球外節を標的とした意思決定障害の新しい予防薬や治療薬の開発につながることが期待されます。
本研究成果は、国際学術誌「International Journal of Molecular Sciences」(2024年8月14日)に掲載されました。
論文URL : https://www.mdpi.com/1422-0067/25/16/8849
<研究成果のポイント>
パーキンソン病モデルマウスを用いた実験で、パーキンソン病治療薬による意思決定障害をタッチスクリーン式アイオワギャンブリング課題で再現することに成功しました
意思決定障害に関わる脳の部位を神経活動の指標(c-Fosタンパク質の発現)を手がかりに探索して、淡蒼球外節と呼ばれる領域を特定しました
淡蒼球外節に存在する神経の活動を人工的に抑制することでパーキンソン病治療薬による意思決定障害が改善しました
淡蒼球外節を標的とした意思決定障害の新しい予防薬や治療薬の開発につながることが期待されます
<背 景>
パーキンソン病は黒質のドパミン神経細胞の脱落により手の震えや歩行障害などの運動症状を主とする神経変性疾患です。パーキンソン病は脳内のドパミンが不足し、運動を制御する大脳基底核※3という脳領域が正常に働かないことから生じると考えられています。そのため、治療にはL-DOPA※4やドパミンアゴニスト※5を用いたドパミン補充療法が適用されています。しかしながら、ドパミンアゴニストの服用中には、その副作用として病的賭博をはじめ、性欲亢進や買い物依存症といった衝動制御障害を呈し、社会生活に大きな問題をもたらします。病的賭博はハイリスク(罰)を顧みずハイリターン(報酬)を好み、持続的に繰り返されるギャンブルにより社会生活に支障をきたす問題行動として知られています。一方で、意思決定とは「複数の選択肢の中から最適なものを選ぶ行為」と定義されますが、病的賭博の背景には意思決定障害があると考えられています。
アイオワギャンブリング課題は、被験者が報酬額および損失額とその頻度が異なるデッキ(カードの山)から1枚ずつカードを選択し、最終的に報酬額を最大にすることが求められる課題で、ヒトの意思決定能力の評価に用いられています(図1)。「ローリスク・ローリターン」のデッキは長期的に得をし、「ハイリスク・ハイリターン」のデッキは長期的に損する設定になっています。治療中のパーキンソン病患者さんは、「ハイリスク・ハイリターン」の不利なデッキから選択する確率が高いことが報告されています(図1)。治療ガイドラインでは、病的賭博を発症した場合にはパーキンソン病治療薬の減量、変更あるいは中止が推奨されていますが、根本的な解決策は存在しません。したがって、パーキンソン病治療薬による意思決定障害の神経メカニズムの解明とそれに基づく新しい予防薬・治療薬の開発が急務となっています。
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