世界初!卵子にDNA溶液を注入することで人工細胞核の構築に成功 細胞核の機能獲得メカニズムの一端を明らかに
Digital PR Platform / 2024年9月13日 20時5分
近畿大学生物理工学部(和歌山県紀の川市)教授 山縣一夫、同大学院生物理工学研究科 博士後期課程1年 米澤直央、慶應義塾大学医学部(東京都新宿区)電子顕微鏡研究室技術員 信藤知子、東京工業大学科学技術創成研究院(神奈川県横浜市)博士研究員 小田春佳(研究当時)、同教授 木村宏、大阪大学大学院生命機能研究科(大阪府吹田市)招へい教授 平岡泰、同特任教授 原口徳子の研究グループは、精子の代わりに精製したDNA溶液を生きたマウス卵子に注入することにより、人工細胞核を構築することに世界で初めて成功しました。
これまで、マウス卵子内において人工細胞核の部分的構造の再構築は可能だったものの、機能を正確には再現できていませんでした。本研究では、細胞の核として機能させるために必要な条件も見出しました。本研究成果は、細胞核の機能獲得に必要なメカニズムを明らかにするとともに、絶滅動物の復活や人工的な生命の創生などにつながることが期待されます。
本件に関する論文が、令和6年(2024年)8月14日(水)に、国際的な科学雑誌"Genes to Cells(ジーンズ トゥー セルズ)"に掲載されました。
【本件のポイント】
●精製したDNA溶液を生きたマウス卵子に注入することにより、人工的な細胞核をつくりだすことに世界で初めて成功
●作製した人工細胞核は、本物の核に非常に似た構造を形成しており、核と細胞質間の物質輸送能力を持つ
●本研究成果は、今後絶滅動物の復活や人工的な生命の創生などにつながると期待される
【研究の背景】
細胞内にある核は、遺伝情報であるゲノムDNAが入っており、DNA複製や転写などほぼ全ての生命現象に関わる重要な細胞小器官です。しかし、核の構造と機能が構築されていく過程や、核が形成されるために必要な要因などについてはあまり研究が進んでおらず、未だに不明な点が多いのが現状です。
これまでの細胞の核形成に関する先行研究の多くは、カエルの卵母細胞の抽出物を用いており、細胞が生きたままの状態で核を観察することができませんでした。そこで、研究グループは、先行研究においてDNAビーズ※1 をマウスの受精卵の細胞内に導入し、ライブセルイメージング※2 により細胞を生きたまま観察することで、核の構築メカニズムの解明に取り組んできました。その結果、DNAが特定の構造をとり、核として必要な核膜や核膜孔複合体※3 を形成する様子を人工的に再現することに成功しました。しかし、マウス受精卵内で構築した核に似た構造体は、核に本来ある核と細胞質の間の物質輸送能力を持っておらず、核の機能を完全に獲得した構造の構築は達成できていませんでした。
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