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外部磁場を必要としない新型超伝導磁束量子ビットを世界で初めて実現 ~量子コンピュータの小型化に貢献する素子応用を拓く~

Digital PR Platform / 2024年10月15日 14時4分

外部磁場を必要としない新型超伝導磁束量子ビットを世界で初めて実現 ~量子コンピュータの小型化に貢献する素子応用を拓く~

【ポイント】
・コイルなどの補助回路を必要とせず、ゼロ磁場で最適動作できる新型の超伝導磁束量子ビットを開発
・強磁性ジョセフソンπ接合を持つ超伝導量子ビットとしては最も優れたコヒーレンス時間を達成
・量子コンピュータの小型化を実現する量子素子への応用に期待

 国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT(エヌアイシーティー)、理事長: 徳田 英幸)は、日本電信電話株式会社(NTT、代表取締役社長: 島田 明)、国立大学法人東北大学大学院工学研究科(工学研究科長: 伊藤 彰則)、国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学(総長: 杉山 直)と共同で、ゼロ磁場で動作する新型超伝導磁束量子ビット*1の開発に成功しました。
 超伝導磁束量子ビットには、従来、コイル等の補助回路で発生させた外部磁場が必須でした。今回開発した強磁性体を使ったジョセフソンπ接合*2による超伝導磁束量子ビットは、コイル等を必要とせず、外部磁場印加と同等な超伝導の位相を反転させる機能を確認しました。さらに、π接合を組み込んだ量子ビットの中では最長クラスのコヒーレンス時間を達成しました。量子ビットの寿命はマイクロ秒の範囲ですが、今後、π接合の材料を更に改良することで、このπ接合やゼロ磁場で動作可能な磁束量子ビットは、量子コンピュータに欠かせない高機能な量子素子の必須要素となる可能性があります。
 本成果は、2024年10月11日(金)に、英国科学雑誌「Communications Materials」に掲載されました。

【背景】
 未来の情報社会では、量子コンピュータが、材料・医薬品開発から情報セキュリティまで、幅広い分野で重要な役割を果たすと期待されています。特に、超伝導量子ビットは、量子状態の制御が比較的容易な有望な技術です。超伝導量子ビットの重要な構成要素であるジョセフソン接合*3は回路に非調和性*4を与え、これにより量子ビットが動作します。表1に代表的な超伝導量子ビットの特性を示します。
 現在広く使用されているトランズモン量子ビット[1]*5は、非調和性が低いため、多数の量子ビットを集積化すると誤動作や周波数衝突と呼ばれる干渉問題が発生しやすくなるなどの欠点を持つことが知られています。
 一方、磁束量子ビット[2, 3]は、図1(a)のようにジョセフソン接合を三つ使用するため非調和性が高く、周波数衝突の問題を緩和できます。しかし、磁束量子ビットは、(量子ビットのコヒーレンス時間が最長となる)最適動作のために、外部コイルで超伝導ループに磁束量子(Φ0 = 2.07×10-15 Wb)の半分の磁束を与える必要があります。これは、外部コイル由来の低周波ノイズの要因になり、各々の量子ビットに磁場印加用コントロールラインが必要なため、大規模集積化の課題となっていました。

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