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制酸剤の漫然とした服用はタンパク質不足の原因になる可能性がある

Digital PR Platform / 2024年11月8日 10時47分


<背 景>
現在、65歳以上の男女のうち10−20%が低栄養といわれています。低栄養は入院期間の延長などにつながりかねず、入院前からの介入が必要とされます。低栄養では、タンパク質摂取量の低下や炎症などにより、プレアルブミンやアルブミンの低下が見られます。またビタミン欠乏を伴いやすく、ビタミンB12欠乏を合併することがあります。
食べ物の消化には、咀嚼嚥下といった物理的消化、唾液や胃酸による化学的消化、腸内細菌による生物的消化があります。当然ながら、消化が悪くなると、栄養素の吸収が悪くなることは予想できます。
我々は、嚥下咀嚼といった物理的消化、制酸剤やヘリコバクターピロリ感染といった化学的消化が、栄養マーカーであるプレアルブミン、アルブミン、ビタミンB12の血中濃度とどのように関連するかを藤田医科大学国際医療センターの精密検診を受診した方(92名)に関して調べました。
<研究手法・研究成果>
藤田医科大学国際医療センターで精密検診を受けた92名(男性67名、女性25名)を対象に、(プレアルブミン、アルブミン、ビタミンB12)を従属変数、物理的消化(咬合力、咀嚼機能、嚥下機能質問票(EAT-10)もしくは化学的消化(制酸剤[PPIもしくはPCAB]内服、ピロリ菌抗体陽性、ピロリ菌除菌歴)、蛋白またはビタミン摂取量、年齢、性別、BMI、CRP(C反応性蛋白)を目的変数として多変量解析を行いました。

重要な知見として、

物理的消化については、栄養マーカー(プレアルブミン、アルブミン、ビタミンB12)と概ね関連が見られませんでした。
理由:これは咬合力、咀嚼能、嚥下機能の保たれていた方が多いためと考えられます。
化学的消化の中で、制酸剤はプレアルブミン濃度と負に関連しました。
理由:胃酸の分泌を抑えるとタンパク質の消化が抑制されるため、蛋白合成の原料であるアミノ酸の吸収が制酸剤により低下したためと思われます。ビタミンB12に関して関連が見られなかったのは、制酸剤の投与期間を考慮していないためと思われます。制酸剤の性質として、飲んだり飲まなかったりという方が意外と多い印象を受けます。なお、長期(2年以上)の制酸剤投与ではビタミンB12濃度を低下させるとの報告があります。
物理的消化、化学的消化に関係なく、血中プレアルブミン濃度およびビタミンB12濃度は、各々タンパク質摂取およびビタミンB12摂取量と正に関連しました。他方、アルブミン濃度はタンパク質摂取と関連は見られませんでした。
理由:血中プレアルブミン、ビタミンB12濃度がそれぞれの摂取量に正に関連することは、栄養マーカーとしての有用性を反映しているためと思われます。
物理的消化、化学的消化に関係なく、CRPはアルブミン、プレアルブミン濃度と負に関連しました。
理由:炎症によりアルブミン、プレアルブミンの合成が低下することを反映します。
本研究では、肝障害、腎障害、甲状腺機能がない患者さんがほとんどで、年齢、性別、BMI、炎症反応も考慮した上で、解析を行うことができました。
理由:甲状腺、肝障害、腎障害はプレアルブミン、アルブミン、ビタミンB12の濃度に影響を与えます。そういう影響を除外できたので、制酸剤とプレアルブミンの関連が明らかにできたと思います。

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