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【名古屋大学】ヘビの怖さはウロコのせい⁉ ~ヘビのウロコを着たイモリは、ヘビと同じかそれより早く見つかる~

Digital PR Platform / 2024年11月20日 20時5分



これは、ヘビはほかの動物より早く見つけられるという、これまでの結果と一致しています。また、身体や尾の長い動物(イモリ)よりも、ヘビを早く見つけられることを示しました。
さらに、実験1で用いたイモリの写真に、画像処理でヘビのウロコを貼り付けて、先のヘビの写真と比較したところ、2頭のサルはヘビとウロコありのイモリを同じ時間で見つけ、1頭はむしろウロコありのイモリを見つけるほうが早くなりました(実験2)。ヘビの写真に違いはなく、イモリもウロコをまとっただけで、このように見つける時間が変わったことは、ヘビのウロコに対して敏感に反応していることを意味しています。

脅威のすばやい検出は、網膜からの情報を大脳皮質で順次処理して恐怖の中枢である扁桃体(注3)へ伝えるのではなく、網膜から皮質を経由せずに上丘―視床枕(注4)を介して扁桃体へ直接伝える経路を使うと考えられています。視床枕にはヘビのウロコ様の模様に反応する神経細胞があり、ヘビの写真に対して活発に反応することから、視床枕やそこと密接に関連する皮質領域がヘビの検出を担っていると考えられます。

先日亡くなられたホラーマンガの巨匠、楳図かずおさんの代表作の一つに「へび女」という作品があります。そのなかの「ママがこわい」という話の冒頭で、主人公の少女は入院している母から「病院にはへび女がいる」という話を聞きます。母親はへび女のことを「からだじゅうウロコがはえていて、口が耳もとまでさけて、すごい顔をしているそうよ」と説明します。単行本の目次ページの背景には一面、ヘビのウロコが描かれています。楳図さんは、わたしたちがヘビのウロコを怖れるということを無意識のうちに気付いていたのかもしれません。

【用語説明】
注1)Snakebite envenoming:
https://www.who.int/health-topics/snakebite
注2)ヘビ検出理論(The Snake Detection Theory):
米国の人類学者Lynne Isbellが唱えた理論。霊長類が、ほかのほ乳類よりも大きな脳を持っている理由は、霊長類が出現したとき以来のヘビを検出するために視覚系を発達させたためと考える理論。
ヒトの祖先の霊長類は、およそ6500万年前ころから樹上で放散適応を始めた。樹上で暮らす霊長類を補食できたのは、当時はヘビだけであった。現在では、猛禽類や大型ネコ科動物も霊長類を捕食するが、30 mを超える枝の生い茂ったところで暮らす霊長類まで近づけるのは、ヘビくらいしかいないと考えられる。そのため、霊長類の祖先は主たる補食動物であるヘビを、すばやく効率的に見つける必要があったと考えられる。
注3)扁桃体:
脳の側頭葉の内側にある複数の神経核群で、脳内のとくにネガティブな情動の中枢としての役割を担う。
注4)視床枕:
視床背面から尾方部へ突出する大きな膨隆部。齧歯類には存在しない。V2, V4などの初期視覚領域と連絡がある。

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