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数理モデルの誤差を細胞内のセンサー分子を使って補正する、 コンピューターと細胞が協力するハイブリッドなバイオプロセス制御システムを開発

Digital PR Platform / 2024年11月21日 17時28分


<研究成果のポイント>

バイオプロセス制御におけるモデル誤差の問題を解決するために、モデルにもとづく入力最適化と人工遺伝子回路※4によるフィードバック制御※5を組み合わせたハイブリッドな制御システムを設計しました。
ケーススタディとして、酵素によって細胞内に蓄積された中間代謝物を感知して自律的に酵素発現を抑制する人工大腸菌株に着目しました。
モデル誤差を意図的に加えたシミュレーションにおいて、設計したハイブリッド制御システムが、モデル誤差による生産物収量の減少を緩和できることが実証されました。


<背 景>
細菌や酵母などの生きた微生物を利用して、医薬品、食品、化学材料などの有用な物質を生産する工程をバイオプロセスとよびます。バイオプロセスで効率よく目的生産物を作り出すための基本的な方法は、目的生産物に至る反応経路を触媒する酵素の発現増強です。誘導剤などの入力に応答して酵素を発現する遺伝子回路を微生物に組み込むことで、目的生産物の合成速度を速めることが可能です。しかし、酵素の発現増強は、細胞内に蓄えられた栄養分などの資源を過剰に消費することで、細胞の増殖や生存を妨げるおそれがあります。そのため、バイオプロセス全体の収量を最大化するには、酵素の触媒作用と細胞への負担のバランスをとり、酵素発現を適切なレベルに制御する必要があります。そのためのアプローチのひとつは微生物の数理モデルを使った方法です。入力に対する微生物のふるまい(細胞の増殖、酵素の発現、代謝物の生産、栄養分の消費など)を数理モデルを使って予測することで、最適な入力を事前に決めることができます。この方法の問題点は、モデルの誤差により、事前に決めた入力のもとで酵素の発現レベルが最適ではなくなり、その結果、生産物の収量が減少してしまうことです。もうひとつのアプローチは、細胞内の代謝物を感知するセンサー分子を組み込むことで、微生物に自律的に酵素発現を制御させる方法です。実際の細胞の状態に合わせて臨機応変に酵素発現を調節できる点が特長ですが、コンピューターのように未来を予測して生産物収量を最大化するような微妙な制御は難しいという欠点があります。つまり、これらふたつのアプローチは互いの弱点を補い合う関係にあります。そこで、本研究ではこれらを組み合わせたハイブリッドな制御システムを設計し、モデル誤差がある場合でも生産物収量の減少が抑えられることをシミュレーションで示しました。

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