「同級生」BL漫画アニメーション化の歴史とその魅力 アニメーション作家と研究者がトーク【第2回新潟国際アニメーション映画祭】
映画.com / 2024年3月18日 19時0分
矢野氏は「BL漫画は詳しくないのですが、『同級生』原作は読んでいて、劇場公開作品になってすごく驚きましたし、この作品は原作の通りというか、原作の雰囲気をそのまま保った劇場版アニメーション」とコメント。そして、なぜ原作の雰囲気を保てるのか? を映像として見た際に“余白の使い方”に着目し、作り手の観点からその具体例を語る。
「原作の画面の構成と一緒ですが、すごく余白があって、なおかつ後から余白を埋めるように、丁寧にゆっくり恋が育まれていくのが、漫画と映画の両方でなされている」「例えば、雨のシーンは、空を真っ白にして描くっていうのもすごい。漫画でのこの余白感は映像ではどうするんだろう? と考えながら見ると潔い。でもそれでいてものすごく詰まっている。そこに驚くのと、作画はもちろん、キャラクターデザインが線が丸っこい感じでそれが動画になるとコミカルになる。本当に原作の中村先生の世界観が映像として結実している。画面としての余白と物語としての余白の2点がある」
作画について須川教授は、「非常に繊細な線が実現していて、それから何とも言えぬ水彩画のような背景。それが心象風景を表したり、微妙な色合いのグラデーションがかかった薄さが、セリフ以外で気持ちが伝わる」と感想を述べ、「漫画の方は基本白黒なので、背景を白くするとコマの広さが強調される。アニメはある程度色が付くので、白がより際立つ効果がある。また、空間と構図を考えると、漫画もそうですけれども、主人公たちのキャラクターがフレームアウト、見切れている画面もあり、それでもセリフが続いていたりとか。アニメーションでそういう構図を作るのは、勇気がいったと思う。フレームを使った余白も巧妙だと思った」と、矢野氏が指摘した余白の使い方についての印象を述べる。
また、クイアニメーションと呼ばれる性的マイノリティをテーマにしたアニメーションを研究している矢野氏は、「ボーイズラブという要素が薄まっているとか、ファンタジー化されていることを感じなくて、葛藤もすごく軽やかに乗り越え、2人の関係性の中で作られていくストーリーテリングが素晴らしい」「2人の関係性がしっかり描かれているので、2人のその後も想像できる。一方で男性同士だからこそある葛藤なども目をそらさずに、向き合う、そういった部分にも励まされる。(観客に)これは自分たちの映画だ、という見られ方をされたのではないか」と感想を語る。
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