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【「続・夕陽のガンマン 地獄の決斗」評論】多くの作家に影響を与え続けるイーストウッド×レオーネ×モリコーネが放った傑作

映画.com / 2024年3月24日 8時0分

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「続・夕陽のガンマン 地獄の決斗」は公開中 (C)1966 P.E.A. Films, Inc. All Rights Reserved.

 イタリア製西部劇=マカロニ・ウエスタンの傑作「荒野の用心棒」が1964年に製作されてから60周年を記念して、主演クリント・イーストウッド、監督セルジオ・レオーネ、音楽エンニオ・モリコーネのトリオによる3大傑作「荒野の用心棒」「夕陽のガンマン」「続・夕陽のガンマン 地獄の決斗」が2024年3月22日から4K復元版で日本初一挙上映された。

 「荒野の用心棒」は1964年9月にイタリアで公開されて大ヒットを記録。その勢いはあっという間に世界中に広がって、各国でマカロニ・ウエスタンのブームを巻き起こし、続く「夕陽のガンマン」「続・夕陽のガンマン 地獄の決斗」とあわせて“ドル3部作”と呼ばれている。このトリオによる3作目「続・夕陽のガンマン 地獄の決斗」は、南北戦争下、3人の流れ者が大金を巡って繰り広げる熾烈な争奪戦を描いた3時間に及ぶ超大作。英語題名は「THE GOOD,THE BAD AND THE UGLY」(いい奴、悪い奴、汚い奴)で、前2作よりもコメディ色を強めながら、迫力のアクションと圧倒的なスケールでボリュームアップしている。イーストウッドが演じる賞金稼ぎ、イーライ・ウォラックが演じるお尋ね者、「夕陽のガンマン」にも出演したリー・バン・クリーフが演じる捕虜収容所長がクライマックスに対峙し、撃ち合う前の緊張感が張り詰めた名シーンに痺れる。

 モリコーネの印象的な音楽、哀愁のメロディーが全編を包み込み、レオーネのスタイリッシュな演出の特徴である超クローズアップ、急速なズーム、パンフォーカス、地面からややあおり気味のローアングルなど、鮮烈で斬新なショットやカメラワークは一度見たら病みつきになる。そして、目深に被ったハット、無精ひげにタバコをくわえ、ポンチョを着こなす孤高のガンマンという映画史上のアイコンとなったイーストウッドが演じるキャラクターの眼光鋭くニヒルな表情とクールな存在感に、脳天を撃ち抜かれることだろう。

 「続・夕陽のガンマン 地獄の決斗」クライマックスの決闘シーンは伝説となっていて、そのロケ地「サッドヒル」墓地の復元に挑む有志たちを追ったドキュメンタリー「サッドヒルを掘り返せ」(2017)がスペインで製作されているほど。あの印象的な墓地が映画のために作られたと知ると、その規格外の映画的なスケールに驚嘆する。

 “ドル3部作”は映画の原点にして頂点とも言われるが、半世紀以上経った現在も色あせることなく鮮烈。世界中の映画ファンに愛され、その後の映画、映画人だけでなく、音楽やゲームなど世界のサブカルチャーのアーティストやクリエイターらにも多大な影響を与え続けている。クエンティン・タランティーノは西部劇「ヘイトフル・エイト」で敬愛するモリコーネにアカデミー賞音楽賞受賞をもたらし、香港のジョニー・トー、韓国のキム・ジウン、「ジョン・ウィック」シリーズのチャド・スタエルスキらもこの系譜を継ぐ監督たちだ。黒澤明監督の傑作時代劇「用心棒」を西部劇としてリメイクした「荒野の用心棒」から “マカロニ・ウエスタン”という新しいジャンルが確立された映画史的意義は非常に大きい。“ドル3部作”にハマった人には、レオーネとモリコーネが組んだ「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウェスト」をオススメする。

(和田隆)

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