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ホウ・シャオシェンから伝えられたことは? 台湾ニューシネマの系譜を受け継ぐ俊英、新作「オールド・フォックス」を語る【アジア映画コラム】

映画.com / 2024年6月26日 19時0分

 子どもの質問に真剣に答えたかったのですが、これが本当に難しい。自分自身と議論しなければならないことさえありました。 子どもたちとの長い対話の末に、いくつかのアイデアが蓄積されたので、本格的に動き出しました。

──本作の時代背景は80年代末。この設定に関する理由はありますか?

 1989年、当時の私は22歳でした。あの時は台湾の貧富の差が広がった原点とも言えるので、それを振り返るためです。なぜ貧富の差が広がったのかというと、実は台湾の政治と関わっています。台湾は1987年に戒厳令が解除されました。その後、多くのルールが変更となりました。投資、金融、株など、一気に裕福になる手段が増えたんです。その瞬間から“台湾”が大きく変わりました。

 戒厳令の時代は、一生懸命働けば、多くの給料が得られました。一方、一生懸命働かなければ、給料が少なくなりました。しかし、戒厳令解除後、その方程式が崩れたんです。それがとても興味深くて。あの時代、あの空間の中で物語を展開したかったと思いました。

──私はいま30代半ばです。日本に来たのは20歳前になります。この十数年で中国本土の経済は急成長し、社会全体が大きく変わりました。私が小学生だった頃、人々はもっと楽に暮らしていた印象です。 経済発展がまだまだこれからというところで、競争や階級闘争はそれほどなかったように思えます。しかし、近年の“大きな変化”が庶民に与えた影響は非常に大きかったと感じています。彼らは道を見失ったとも言えるのではないかと思っています。ここからは登場人物についてお聞きしたいのですが、父親のリャオ・タイライは、時代の変化に翻ろうされた一般市民です。このキャラクターはどこから生まれたのですか?

 リャオ・タイライという人物のすべては、私の母親から発想したものです。激動の時代の中で、私の母親は古い時代の側にいました。彼女の生い立ちや価値観はもう変えられなかったんです。世界全体が大きく変化していた当時、彼女はとても混乱し、道を彷徨っていました。そして新しい時代の生き方を教えてくれる人もいなかったので、今まで通りに私を育ててくれました。

──リウ・グァンティンのキャスティングの経緯も教えて下さい。彼は“あの時代”を経験してはいませんね。

 この映画に関わっている俳優のほぼ全員が“当時の経験”はない、あるいは非常にかすかな記憶しか持っていません。ですから、彼らは“自分の両親”を投影しています。

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