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オクラホマシティ連邦政府ビル爆破事件の主犯、ヘンリー八世と6番目の妻……トライベッカ映画祭で注目した5作を紹介【NY発コラム】

映画.com / 2024年7月7日 16時30分

●「Firebrand」

 今年のカンヌ国際映画祭のコンペ部門にも出品された本作は、劇作家ウィリアム・シェイクスピアの歴史劇として描かれたことのある“ヘンリー八世と6番目の妻キャサリン・パーとの関係”を描いた作品。ヘンリー八世の最後の数カ月に焦点を当てている。急進的な変化を支持するキャサリン・パーが先進的な価値観と信念を持ち始めたことで、ヘンリー八世が猜疑心を抱いていく。ヘンリー八世は留守中に彼女を摂政に任命。新たな権力を得たキャサリン・パーの“国王への忠誠”が揺らいでいく。

 ヘンリー八世は、イングランド王として類稀な政治手腕を発揮したものの、叛逆したものは処刑。わざわざローマ・カトリック教会と決別してまで離婚を宣言し、その後王妃を次々と取り替え、中には断頭台送りにした王妃さえもいた。ヘンリー八世を演じたのは、ジュード・ロウ。ヘンリー八世は、作曲家としての一面も持ち、イタリア語、フランス語、スペイン語などにも精通する万能な文化人でもあった。暴君と文化人の微妙なバランスを、ジュード・ロウが見事に演じきていってる。

 一方、知的で、先を見据えながら行動するキャサリン・パーを演じるのは、人気実力の伴ったアリシア・ビカンダー。見どころのひとつは、多くの人々が会する食事の席でのシーン。他の女性といちゃつくヘンリー八世に対して、キャサリン・パーは動揺もせずにヘンリー八世を嗜め、滑稽な笑い方をしていた女性を一喝する。

 歴史的に見過ごされがちな“6番目の妻”キャサリンの視点を取り上げている点が魅力的。キャサリン・パーは英国で初めて自身の名前で本を出版した女性であることも忘れてはならない。興味深いのは、映画「ビハインド・ザ・サン」の脚本、「もしも建物が話せたら」でメガホンをとったブラジル出身のカリム・アイノズ監督が手掛けているところ。シェイクスピア劇などに影響を受けた凝り固まった演出ではない点も見どころだ。

●「La Cocina」

 今年のベルリン国際映画祭でも披露された作品。タイムズスクエアの近くにある賑やかなレストランの厨房を舞台に、シェフとウェイトレスのさまざまな過去と夢と絶望がぶつかり合うモノクロ映画だ。1959年に手がけられたアーノルド・ウェスカーによる英国の同名舞台劇を映画化。原作とは異なり、ニューヨークのレストランで働く不法滞在者を描いている。

 ある日、突如としてレジからお金が消えてしまった――レストランで働くウェイターは、移民中心のシェフたちを疑っていく。そんな1日の光景を素晴らしいカメラワークで捉えながら、彼らの想いを克明に描いてく。

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