ティーンの初体験描く「HOW TO HAVE SEX」監督インタビュー インティマシー・コーディネーター、セラピストとともに臨んだ撮影の裏側、世界観の構築
映画.com / 2024年7月19日 17時0分
──ディテールがリアルで、この種のパーティやバカンスに行ったことがあるかどうかは別として、似たようなシチュエーションを肌感覚でわかると思わせるものがあります。このような世界観をどのように構築したのでしょうか?
衣装から美術から全ての部署において、とにかくディテールにこだわりまくる人たちばかりでした。特にパーティーのシーンをスクリーンで再現するのは難しいんです。なぜかというと、頭で私たちがイメージしてるパーティーと映像で再現されるものとでは、観客が「ちょっと違うんじゃないか」と感じがちだから。リアルに感じてもらうためにはニュアンスが大事になってくるので、ロケハンもしっかりしました。
例えば、たまたま行ったクラブみたいなところには裸の女性がプリントされているトランプがあって、それを劇中で小物として取り入れたりしたのですが、実は劇中ではどのシーンにも裸の女性が登場しているんですよ。ライターやトランプ、タオルなどにプリントされていたりするのですが、なぜそうしたかというと、私たちがあらゆる場所で常に受けている性的な圧力、プレッシャーを、いろんなアングルから皆さんに感じて欲しかったからです。
あとはティーンのTikTokやブログであったり、私が10代の時に35ミリの使い捨てカメラで撮影した写真なども参考にしました。基本的な構造としては、前半がディズニーランドのように楽しくてクリーン、後半はそれがどんどんゴミだらけのような場所に落ちていくようなイメージですね。
──2人の男性のキャラクター、パディとバジャーも非常に重要な役割を担っています。特にバジャーはタラのことを気遣うなどいい人に思えますが、親友のパディについて「あいつはひどいやつだ」とわかっていながら何もしないという、いわゆる男性同士のかばい合のようなものも感じました。
一つ思っていたのは、この問題を女性だけのものとして描かず、その対話から男性を排除してはいけないということ。むしろ迎え入れて、 一緒に対応していくべきだと考えていたので、パディとバジャーのキャラクターをしっかりと描くことも重要でした。多くの男性が、やはり男たるものはパワフルでなければいけない、自分が何を欲しているのかを理解し、自分の力で手に入れなければならないというふうに育てられている人が多いと思うんですね。
でも、それはすごく間違っている。間違っているけれど、その誤った認識を文化的に全部ほどき直すためには何年も時間がかかる行為なんじゃないかと思っています。この映画を観た男性の中には、つらかっただろうと思うのですが、この映画を観た男性の中には、悪い男子のパディに自分を見てしまう人もいました。でも多くはどちらかというとバジャーに自分を重ねていたと思います。バジャーはすごく優しくてユーモアもあるのですが、やっぱり肝心な時にはタラのために行動できないんですよね。正しいタイミングで声を上げることができないということもまた問題だと思っています。 男子女子に関係なく、誰もがお互いの振る舞いが何か違うと思ったならば、声をあげて指摘しなければなりません。
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