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セックスだけでなく“愛”も危険なもの 小児性愛者の性的搾取描く「コンセント 同意」は、人の心の残念なシステムを知る映画【二村ヒトシコラム】

映画.com / 2024年8月3日 20時0分

セックスだけでなく“愛”も危険なもの 小児性愛者の性的搾取描く「コンセント 同意」は、人の心の残念なシステムを知る映画【二村ヒトシコラム】

(C)2023 MOANA FILMS - WINDY PRODUCTION - PANACHE PRODUCTIONS - LA COMPAGNIE CINEMATOGRAPHIQUE - FRANCE 2 CINEMA - LES FILMS DU MONSIEUR

 作家でAV監督の二村ヒトシさんが、恋愛、セックスを描く映画を読み解くコラムです。今回はフランスの作家ガブリエル・マツネフと14歳で性的関係を持っていた女性がその事実を告発した著書を映画化した「コンセント 同意」。

 小児性愛嗜好を隠すことなく文学作品に仕立て上げ、既存の道徳や倫理への反逆者として注目を集めた作家マツネフと、文学を愛する少女ヴァネッサは同意の上で性的関係を結ぶ。しかし、そのいびつな関係は果たして“愛”だったのか? 二村さん独自の視点で分析します。

※今回のコラムは本作のネタバレとなる記述があります。

 デリケートなことを書きますので、この文章を読んでご自身の経験のつらいフラッシュバックを起こすかたがおられる可能性があります。また文中で紹介される映画の登場人物に対して、あるいはこの文章を書いている僕に対して怒りを感じるかたがおられる可能性もあります。

▼映画の原作本が出版され、著名な作家の公然の悪行が騒ぎに

 この映画 「コンセント 同意」で、まったく弁護の余地のない悪人として描かれているガブリエル・マツネフ(映画の中で演じるのはジャン=ポール・ルーヴ)は、実在するフランスの著名な作家で、名誉ある文学賞の受賞者で、国家から勲章もいくつかもらっており、現在87歳で、まだ生きている人だとのことです。

 つい数年前、この映画の原作である告発本が出版されて騒ぎになり、作家としての栄誉を剥奪され、著書も出版社によって書店から回収されるようになってから、彼はインタビューで「少年を買春するための外国旅行に行っていたことについては、後悔している」と言ったそうです。同じインタビューの中で「だが、あの頃、あの場所では、それは許されていた」という意味のことも言っています。

 彼は、自分が未成年者の少女と交際してセックスしていたことや貧しい国で未成年者のセックスを買っていたことを隠して清廉にふるまっていたのに事実が急にあばかれたのではありません。認めるとか認めない以前に、やってることをずっと本人が文章に書いて出版もしていてテレビ等でもしゃべっていたわけで、彼がそういう人であることをフランスの多くの人は知っていました。

 その上で、彼は(反道徳的でスキャンダラスな人物というあつかいでしたが)名士であった、というくだりが映画にも出てきます。多くの人々(有力な文化人や政治家も)がガブリエル・マツネフの文章のファンだったとのことです。世間の潮目が変わって騒ぎが起きたのは、この映画の原作本が出版されたからです。

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