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【リバイバル上映中】核戦争の脅威を描く英国アニメ「風が吹くとき」森繁久彌、大島渚との日本語版収録秘話

映画.com / 2024年8月4日 11時0分

 大島渚さんと会った時点で森繁さんの出演は決まっていて、森繁さんの収録をどう段取るのかとあわせて、相手役であるヒルダ役を誰にお願いしようかという話になりました。加藤治子さんになったのは、森繁さんとラジオ番組で共演されていたからという話があったからだと記憶しています。加藤さんは収録前、「森繁さんのことは私がリードしますから大丈夫ですよ」みたいな話をされていましたが、実際の収録ではむしろ森繁さんがリードするかたちで積極的にやってくださいました。

 作品をご覧になった方はお分かりのとおり、この映画は夫のジムと妻のヒルダが全編しゃべっている作品です。電話の声で登場する息子のロン役は田中秀幸さん、世界戦争を告げるアナウンサー役はテレビ朝日アナウンサーの高井正憲さんが担当されていて、おふたりは別録りでした。森繁さんと加藤さんは一緒に録って、3日ぐらいかけたと思います。森繁さんはあんこが好物で、いつも大福か何かを僕らのぶんまで差し入れてくれました。最初は大島さんと森繁さんたちでじっくりと話してもらい、その後はほとんど森繁さんと加藤さんにお任せして、僕のほうではきっかけなどをきっちり見つつ、ときおり大島さんがブースの中に入ったり、僕のところにきたりして、要望を伝えるというかたちで進んでいきました。

 森繁さんも加藤さんも声をつくるようなことはせず、ふだんおふたりが会話しているような感じでやってもらっています。ちょっとしたやりとりなどは、けっこうアドリブも多かったはずです。自然にやってもらうため、映像の口の動きにあわせることを気にしすぎないよう、「台本のセリフをきちっと言ってくれれば、細かいところはこちらで調整します」と事前にお伝えしていました。収録では森繁さんのペースを大事にして、それが良かったんじゃないかと思います。アニメのアフレコという感じは全然せず、苦労して録ったという感じもありませんでした。

 大島渚さんは仕事に厳しく、怒ると怖い方という印象をもっている方も多いと思いますが、この仕事をされているときはだいぶ優しい方になっていた印象です。森繁さんにとても丁寧に対応していて、森繁さんもすでに「白蛇伝」で声の仕事をしていたとはいえ、大島さんだから声優の仕事をやったという側面があったのでしょう。僕自身は、大島さんが松竹ヌーベルバーグの監督として活躍していた頃の作品群を楽しく見ていたので、ご一緒できてとてもうれしかったです。ご一緒する前、大島組がよくダビングをしていたスタジオには僕も一時期常駐していて、その地下のロビーで大島さんが殴りあいの大喧嘩をしているところを見てしまったこともあります(笑)。ものづくりのなかで自分の志向と違うことに関しては徹底的にやりあったみたいで、それこそ「愛のコリーダ」のような映画をつくる方ですからね。僕はあの作品を、当時サンリオで仕事をしていたアメリカで見たのをよく覚えています。

 「風が吹くとき」はおかげさまで好評で、仕事が終わったあとに何度か大島さんに呼ばれて飲みにいくことがありました。大島さんなりのねぎらいの気持ちだったのだと思います。大島さんの事務所はテレビ朝日のすぐそばにあり、飲み会には大島瑛子さんや当時NTTに努めていた長男の方もいらっしゃっていました。その後も何かと気にかけてくださって、大島さんの還暦のお祝いを日比谷松本楼という老舗の洋食店でやったときにも呼んでいただきました。そのとき大島さんは、赤いちゃんちゃんこではなく、赤いブレザーを着ていました。

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