1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 芸能
  4. 映画

「ドビュッシーとはまったく違って禁欲的」作曲家モーリス・ラベルを演じた「ボレロ 永遠の旋律」主演ラファエル・ペルソナインタビュー

映画.com / 2024年8月11日 8時0分

――アンヌ・フォンテーヌ監督からは、絵画や映画などの参考文献を何か示されましたか?

 参考文献はありません。でもたくさんの示唆はありました。幸運だったのは、準備に多くの時間を割けて、アンヌと私はたくさん話すことができたことです。ピアノや指揮のレッスンとは別に、私たちは1年間、週に2回会ってモーリスについて語り合いました。私たちはモーリスと呼んでいたんです。でも、彼女も私も、モーリスという人物を心理学的に解明しようとはしなかったし、多くの映画伝記映画がヒーローの信頼性を高めるために必要とするスタイルを真似ようとも思いませんでした。ラベルという人物がほとんど知られていないおかげで、私たちはより自由になることができたんです。

 撮影現場に着いたとき、私はすでにアンヌのことを充分理解できていたし、私たちがどのようにうまくコラボレーションしていくかもわかっていました。それは、時間をかけて淹れたおいしい紅茶のようだったかもしれませんね(笑)。

――ラベル本人は、「ボレロ」という作品を嫌悪していました。

 ラベルはこの作品を、混沌のうちに終わる人生の寓話だと考えていました。エロティックなものもセクシャルなものは何もないと。産業革命の時代、機械化、戦争、ジャズ、サックスを使った反復したリズムの力強い高まり……彼はこの作品に多くのものを注ぎ込みました。オペラ座で初めてこの曲が演奏され踊られるのを見たとき、彼はぞっとしました。イダ・ルビンシュタインは、彼女がいつも彼に示唆していたこと、彼の作品のエロティックな側面を理解させたのです。そして、彼はそれを認めるに至ります。心ならずも「ボレロ」が彼の重い十字架となったのです。

――あなたも仰る通り、私たちはラベルという人間について何も知りません。

 アレクサンドル・タローは、ラベルは最も官能的で性的な作曲家の一人だと言っていますが、実生活での彼は正反対でした。ラベルは少年のまま、決して大人としての人生に足を踏み込まなかった。彼は母の死後もピアノのそばに写真を飾っていたほど母親(アンヌ・アルヴァロ)に深く執着していたと言えます。同時代の猥雑なドビュッシーとはまったく違って禁欲的です。アレクサンドルの言葉を借りれば、この2人はフランスの流派の2つの側面を表しているのです。

――一方は鬼のように残忍なドビュッシー、もう一方は女性に囲まれたダンディ…

 そうです。とても人間的で優しく、包み込むような人柄であるシパを除けば、ラベルは女性だけに囲まれていました。まず母親、そして心を打ち明けることができる親友のマルグリット・ロン。エマニュエル・ドゥヴォスがこの役にふさわしいユーモアをもたらしています。ラベルが「ボレロ」を彼女に披露したときの狼狽したリアクションが大好きです。ミシア・セールとは、二人が通う華やかな世界でつながっているように見えます。彼女はお金目当ての結婚の悲しみを隠すために、そして彼は自分を覆う溢れんばかりの感情を隠すために。イダ・ルビンシュタインは、性的な話をし、彼の幼稚な雰囲気をからかって、彼を混乱させます。そして家政婦のルヴロも。彼女たちはみな、いつも彼の世話を焼くのです。

――モンフォール・ラモーリーにあるラベルが晩年暮らした家、ベルベデールで撮影する機会に恵まれました。それはあなたに何をもたらしましたか?

 ラベルが「ボレロ」を創作したシーンを、彼自身が使っていたピアノで弾いていると思うと感動でおかしくなりそうでしたよ! この家の中はすべてが当時のままでした。ラベルが大切に取って置いた少し子供っぽい小物や、万国博覧会から持ち帰った中国の装飾品、それから彼自身が選んだインテリアの壁紙の上の縄形の刳り形や、帯状の装飾…ラベルはパリの夜遊びから逃れるために、この家に閉じこもりました。そして、細心の注意を払ってすべてを作り上げたのです。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください