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「そこのみにて光輝く」公開から10年 企画・製作の菅原和博氏が振り返る“幸せな光景”

映画.com / 2024年9月6日 20時0分

 それでも、飛ぶ鳥を落とす勢いの綾野剛さんが出演してくれることになり、高田亮さんが長い小説を上手く脚本に落とし込んでくれた。そこからは、TCエンタテインメントの永田守さんの尽力でお金も集まった。

 スタッフに関しても『海炭市叙景』とほぼ一緒。撮影の近藤龍人さん、照明の藤井勇さんも勝手が分かったうえで違うものを作っていこうという気概に溢れていて、呉美保監督も含めて誰もが気合に満ちていた。それは、やっぱり『海炭市叙景』の存在が大きかった。そのエネルギーが、良い方に向かった。牽引してくれたのは綾野さんだけど、菅田将暉さんの存在も大きかったね」

 「海炭市叙景」(10)、「そこのみにて光輝く」(14)、「オーバー・フェンス」(16)の3本は、“函館3部作”として認知されているが、熊切監督、呉監督、山下敦弘監督という大阪芸術大学出身の3人がメガホンをとっている。これは意図してオファーしたものと思っていたが……。「実は、全くの偶然なんだ。結果的にそうなったけれど、当時はそんなことを考えていなかったし、そんな余裕もなかったからね」と穏やかな笑みを浮かべる。

 製作費に際しては、TCエンタテインメントの尽力、エグゼクティブプロデューサーを務めた前田紘孝さん(故人)が展開したクラウドファンディング、そして「海炭市叙景」の時と同様に函館市民からの寄付でまかなわれた。函館の人々の士気も上がっていたそうで、「撮影時期が夏だったし、開放感もあったね。地元からの期待値みたいなものは、ひしひしと感じていたし、とにかくまた撮れることがありがたかった」

 そして、モントリオール世界映画祭での快挙は、興行面でも大きく貢献してくれた。14年9月25日には、シネマアイリスで呉監督が“凱旋”舞台挨拶を行っている。同所に居合わせた筆者も舞台挨拶を取材したが、客席は満席に近かった。

 呉監督はこの舞台挨拶で、モントリオールの公式上映後のティーチインで菅田の人気が高かったことを明かしている。「『あの弟役は来ていないのか? あいつは最高だ!』という声がすごく多かったんです。暗くなりがちな世界観を絶妙に成立させたのは彼だ、3人そろってこそ成立したんだという声が多かったですね」と説明。授賞式は途中から受賞を諦めていたそうで、「ダメだと思って、みんなでダラっとしていたんです。そうしたら英題で作品名が呼ばれて、DVD特典映像用にビデオを回す予定だったプロデューサーの星野さんが慌てていた」と裏話を披露し、客席を沸かせていた。

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