「憐れみの3章」ヨルゴス・ランティモス監督インタビュー 奇想天外な物語が3部構成になった理由、撮影中エピソード語る
映画.com / 2024年9月26日 17時0分
そうなんです(笑)。彼女の撮影日は1日だけでしたが、その日が最も波乱に満ちた日でした。そう、竜巻が来たんです。幸いなことに私たちがいた遺体安置所はとても頑丈な建物だったので安全でしたが、音は聞こえました。そしてその後外に出てみたら、車の窓ガラスは割れ、木は倒れていたりしていました。竜巻の後、ハンターは消えてしまったかのようで、私たちは撮影をその後も続けましたが、それ以降彼女を見ていません(笑)。信じられない1日でした。
――このインタビューはカンヌで行っていますが、撮影現場にいたいという、映画を作りたいという欲求は、常に監督の中にあるのでしょうか?
そうですね。私たちはいつも、「少しくらいは休みが必要だよ、もう疲れたよ」と言ったりしていますが、少し時間が経つと、私たちの頭の中に溜めていたものを外に出す必要が出てきます。それが私を押し進める理由になっています。作りかけ途中のものを寝かせ、距離を置いて少し休憩する、ということが出来ず、どうにか完成させなければと思ってしまうのです。その気持ちに駆り立てられるのです。過去に失敗したと感じたものを「今回はもっとうまくやるんだ」とか「もっとシンプルにしよう」とか言って、毎回より良いものにしようとします。上手く行く時もあれば、上手く行かない時もあり、その時はさらにそこに修正を入れ、直していきます。それはより良いものを作るための絶え間ない戦いなのです。ですので、そうですね、休みをとることは難しいですね。
――それは自己批判のようなものでしょうか、批評家が自分の映画についてどう言っているか、観客の反応は気になりますか?
直接深く掘り下げようとは思いませんが、世間の反応は感じています。感じないようにすることは不可能ですしね。ですが、少し偉そうに聞こえてしまうかもしれませんが、私は自分自身がその作品に対してどのように感じているかに重きを置いています。少数の特定の意見や、外に出てみんなの意見を探し回るよりも。もちろん、多くの方に作品を観て楽しんでもらえることは喜びですし、それを自身で楽しまないことはありません。ですが、私はネガティブな反応に対して心配はあまりしません。なぜならば複雑な作品であれば、全員が虜になることはないでしょう。ネガティブな反応は必ずあるものなので、私は受け入れています。
「憐れみの3章」は9月27日公開。
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