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映画「十一人の賊軍」撮影現場潜入レポート 新たな集団抗争劇への期待が高まる生々しい舞台装置、白石和彌監督の思い

映画.com / 2024年10月5日 12時0分

 そして、笠原氏の未完のプロットに、白石組としてどのような肉付け、改変があったのかを聞いた。

 「脚本の池上純哉さんと一緒に考えながら、基本的には笠原さんのプロットに準じた物語になっています。ただ、この企画について(当時の東映京都撮影所所長)岡田茂さんが言ったという「全員死ぬような辛気臭いものはやめろ」という言葉に共感するところがありました。誰かに生き残ってほしくて、そこは元のプロットから大分改変しているところです。今の時代に作る時代劇として、侍の時代の終わり、時代が変わるときに、誰が生き残って未来を見ていくのか――というメッセージを込めました」

 「戊辰戦争のさなか、奥羽列藩同盟の新発田藩が裏切り者として語られます。一般的に日本の戦争の物語は、(内戦である)戊辰戦争でも白虎隊が国のために死ぬ悲劇になりますが、裏切り者と言われる側の事情を描くことで、どちらにも悪はなく、どちらにも正義がある、それを描けると思いました。砦を守った奴らは罪人だから、あとは殺してもいい――そういうロジックや物語の強さに訴えるものがあり、それは笠原さんだからこそ出てきた考えです。そこさえ守れば細かい変更は問題ないと、笠原さんのプロットの強さを信じました」

 そんな白石監督の思いも込められた、新たな集団抗争劇(1人のスターに頼らない集団劇)として、主演の山田と仲野のほか、尾上右近、鞘師里保、玉木宏、阿部サダヲら豪華キャストが顔を揃える。

 「これまで群像劇は撮っているつもりでしたが、毎シーン10人以上出るようなことはなかったので、人の力ってすごいんだなと感じています。いつもはシネスコの中に2人か1人、何か決めゼリフを言うときに、単独のショットを撮ることが多いですが、今回はグループショット。集団の中で誰かが強いことを言っても、その強さは、(カメラが)寄っているから強い、引いているから弱いということではない、そういうことも発見しました」

 「今まで経験したことがないことなので、その分大変です。ただ何か噛み合った瞬間の強さみたいなものが他の映画とは違う感じがあって、冒険しているような気分。もちろんプレッシャーはありますが、そのプレッシャーは今に始まったことじゃないですし、これだけ優秀なスタッフやキャストがこれだけ集まっているので、もうやり切るしかありません」と白石監督は撮影を振り返った。

 “勝つことだけが正義なのか?”と藩のために命をかけて砦を守る罪人たちの葛藤、そして権力へのアンチテーゼを、白石監督と豪華キャスト、名スタッフがすさまじい熱量で、今、映像化する意義とその迫力を是非大スクリーンで体感してほしい。映画は11月1日全国で公開。

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