1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 芸能
  4. 映画

「シュルレアリスム100年映画祭」が開幕、巖谷國士氏が“シュルレアリスムと映画”を解説

映画.com / 2024年10月9日 10時0分

 「オートマティスムは、あらかじめ何も考えずにものを書くという自動記述の実験から始まった。人間の思考は、あらかじめ用意して、理性によって合理主義的に組み立て、それをまとめて概念化するものではない、という考え方。いや、考え方というより、そのほうが真実だろう。人間の思考は夢がそうであるように、言葉に先立って思考があるわけではなく、言葉として、イメージとして出てくるものだから。映画にもそういうところがあって、夢みたいに何の説明もなしにイメージが展開する。それが思考の流れに作用してくるわけで、映画と夢はよく似たものです」

 「夢は、人間の昼間の思考があって、夜の夢という別の世界があるのではなく、思考と夢との間には、例えば夢うつつ、と呼ばれるどちらとも言えない状態もあるとおり、連続している。人間は夢を含めて漠とした大きな思考のなかの、ある表面的な部分を理性的な合理主義的な思考と呼んでいるにすぎないわけで、本当はもっと広い世界のなかにいるのではないか、と言うのがシュルレアリスムです」

 さらに、意外なもの同士を結びつける方法論として知られるコラージュについても言及された。「コラージュは方法論である以前に、物事の意外なもの同士が不意に結びついてしまうということが実は現実であり、むしろ偶然というものが、人間の生きている世界の原理だという捉え方につながってゆく。そういうことをすべて合わせてみると、とくに初期の映画はシュルレアリスムの要素を持ち、シュルレアリスムのアートの可能性に満ちていたように思います」と、シュルレアリスムと映画の関係について観客に語った。

 この日に上映されたのは「金で買える夢」(1947)で、まず「思わず笑っちゃう、とにかくおかしい映画」と語る巖谷氏。かつてダダ運動の観察者だったハンス・リヒターが監督・脚本・編集を務め、7つの夢を描くもので、マックス・エルンスト、フェルナン・レジェ、マン・レイ、マルセル・デュシャン、アレクサンダー・カルダーがそれぞれ原案を提供し、音楽もダリウス・ミヨー、ポール ・ボウルズ、デイヴィッド・ダイアモンド、ジョン・ケージという、稀に見るすごいメンバーが参加している。

 巖谷氏はそれぞれの短篇の夢のエピソードの作風、作家の背景と逸話を紹介し、「こんなに贅沢な映画は珍しい。やや詰め込みすぎで、無理やりオムニバスにして物語を作っていますが、物語抜きにして一篇一篇を別に見たいほど。この映画によってシュルレアリスムのいろんなことを感じとることができる。シュルレアリスムとして作られたものではなくても、映画がシュルレアリスムだということもわかる。映画とシュルレアリスムの関係はあまりにも密接なので、シュルレアリスムを通っていない映画はあまり面白くないほど。それを説明するのにはたぶん1時間半ぐらいかかってしまうのでこれで終わりますが、『金で買える夢』はわけのわからないところがあっても、一篇一篇の夢のエピソードがほんとにおもしろい。やっぱりすごいメンバーが揃うと違うなとも思います」とまとめた。

 「シュルレアリスム100年映画祭」は、11月7日まで渋谷・ユーロスペースで開催中。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください