移動映画館で日銭を稼ぐ父親と娘 ロシア辺境の大地と人々を独自の感性で描くロードムービー「グレース」監督インタビュー
映画.com / 2024年10月18日 6時0分
2023年・第76回カンヌ国際映画祭の監督週間に選出され、その年の同映画祭で上映された唯一のロシア映画「グレース」が10月19日から公開される。ドキュメンタリー出身の新鋭イリヤ・ポボロツキーが東欧の民話をモチーフに監督・脚本を手がけ、ウクライナへの軍事侵攻が本格化する直前の2021年秋に撮影を敢行。全編を通して陰鬱さの中に不思議な温かさを漂わせながら、ロシア辺境の大地と人々を独自の感性で描くロードムービーだ。
このほど、ポボロツキー監督のインタビューを映画.comが入手した。(インタビュアー:村尾泰郎)
<あらすじ>
ロシア南西部の辺境で、乾いた風が吹きつけるコーカサスの険しい山道。無愛想な目をした16歳の少女とその父親である寡黙な男は、錆びた赤いキャンピングカーで旅を続けながら移動映画館で生計を立てている。母親の不在が父娘の関係に影を落とし、車内には重苦しい沈黙が漂う。やがて2人は世界の果てのような荒廃した海辺の町にたどり着き、娘は終わりの見えない放浪生活から抜け出そうとある行動に出る。
――「グレース」は象徴的なイメージがちりばめられていて寓話的な物語ですね。
そう感じていただけると嬉しいです。というのも、ヨーロッパの神話や昔話をイメージして作った物語なのです。そうした物語の多くは、若い主人公が住み慣れた場所から旅に出て、そこで何か非常に重要なものを見つける。そして、元いた場所に帰ってきた時には大人になっている。つまり、旅を通過儀礼として描いているのです。ロシアの昔話の主人公は少年が多いですが、「主人公を少女にしたらどうなるだろう?」ということに興味を持って物語を考えました。
――少女は行く先々でポラロイド写真を撮っていますね。彼女にとって写真は旅日記のようなものなのでしょうか。
写真は旅日記であり、世界と彼女の関係を生み出すものです。彼女はカメラを通じて世界を見つめている。世界に対して関心を持っているのです。一方、父親はずっと自分の世界に閉じこもっています。父親はソ連崩壊後にすべてをなくした人達の象徴です。道端で本を売っている男性が出てきますが、彼も父親と同じような存在です。その男性や父親は本の世界に引きこもっているのです。今、ロシアでは世代間の対立が激化しています。ソ連崩壊後に自分の世界に閉じこもった父親の世代。それに対して、娘の世代は非常にオープンで世界に興味を持っている。ウクライナの戦争が始まって以来、世代間の対立はさらに深刻なものになっています。
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