吉田大八×大九明子×入江悠、それぞれが抱く東京国際映画祭への思い
映画.com / 2024年10月22日 11時0分
吉田:普段は観ない映画を観るという経験によって、運命的な映画に「出合ってしまう」というチャンスだと思うんです。シネコンでもミニシアターでもなく、国際映画祭という舞台で全く知らない監督の作品だけど観てみようかな……というロマンを体験してもらいたいですね。逆に映画祭側としては、そういった事前知識にとらわれない「出合ってしまう」という経験をしてもらうには、どうしたら良いのかという導線を開発するチャンスではないかと思うんですよね。
大九:私もそう思います。最近の映画興行において、宣伝でなるべくこういう映画ですと全体的に認知したうえで公開するのがセオリーらしいんですね。でも、映画祭に関しては大八さんがおっしゃったように「出合い」だと思うんです。時間があるから観てみよう、でもいい。吟味に吟味を重ねて「この映画を観るぞ!」というのとは全く違う運動神経で映画祭に来てもらえるシステムがあると良いかもしれません。気軽に来られる料金体系とか、ポイント制とか。
入江:監督目線で言うと、今日3人で取材を受けるって、映画祭でしかないこと。数日前に「鼎談」と書いてあって、やばい! と思って、おふたりの見逃していた映画を必死になって観てきたんです。観ておくと接し方も変わりますし、そういうことを出来るのが映画祭じゃないかなと思うんです。普段はそれぞれの現場で仕事をしていて会わないですから、映画祭だからこそ集えるようなシンポジウムなどを今以上にたくさん開いても面白いんじゃないかなと思います。
観客目線で言うと、真っ白な状態で映画を観られる唯一のチャンスじゃないですか。そこに足を運んでもらえると嬉しいですよね。僕はミニシアターでの上映後に、ティーチインを長めにやるんですが、湯布院映画祭では映画1本分、2時間近くやるんです(笑)。東京国際映画祭も、プログラムをたくさん組まなくてはいけないのは分かりますが、ワールドプレミアの作品などは2時間くらい監督たちとのティーチインを組むとかしてもらえると、嬉しいですよね。
――また、どうすればより良い映画祭になると考えますか?
入江:運営が円滑すぎるので、もっと雑でも良いのではないでしょうか。昔、インドの映画祭へ行ったら、空港に迎えの人が来ていなくて、自力でホテルにたどり着いたら予約がキャンセルされていたんです(笑)。上映のときも「じゃあ舞台挨拶どうぞ」って、通訳もいなかった。自己紹介は英語でなんとかなりましたが、ティーチインはできるわけがないじゃないですか。たまたま日本人が観に来ていたので、通訳してくれて助かった。あれは緩すぎたんですが、めちゃめちゃ記憶に残っているんですよね。
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