1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 芸能
  4. 映画

「石板のように映画を残したい」川上さわ監督、20歳での初長編作「地獄のSE」インタビュー

映画.com / 2024年10月27日 8時0分

小原:登場人物みんなおもしろいけど滑稽ではない。むしろ存在としての気高さがあり、美しいとさえ思う。それがいま川上さんが言ったことと関係しているのかもしれません。

川上:みんなマジレス。そこがカッコいい。

▼当時言語化できなかった気持ちを台詞にしてみる

小原:主人公を中学生にした理由は?

川上:中学生っていろいろ考えてること、感じてることがあるけど言語化するのがまだ難しくて……私がそうでした。そうやって溜め込んでいたものを当時言語化できていたらよかったな~と思って。だからいったんそれを言語化できるキャラクターを作ってみようと。こんな中学生いたらいいな~という気持ちで。

小原:わぁ、そのアイデアもおもしろいですね!

川上:天野(綴由良)とか島倉(瞳水ひまり)はしゃべり続ける。でも早坂(わたしのような天気)はどちらかというと私に似てうまく言語化できずに溜め込んでいる。でもでかい感情もあって、それもいいことだなと思う。中学生って本当はもっといろいろ考えてるよってことがしたかった。

小原:それが映画の画面とどう響き合うのかを物理現象のように実践していますね。台詞の構成から実験的かつポップ。

川上:台詞を書くのが好きで。昔は小説も書いていたけど、人に言ってもらう台詞を書く方が私は楽しいって気づいて。そのひとの培われた発話とか癖とかを使って台詞を書くのが好きだし、そのひとの中にあるものをスタートにしながらそれをどんどんフィクションにしていく。本当はノンフィクションのものがあるけどそれを架空の世界に立ち上げたときに何に対応するのかを考えて台詞を書いたりしています。

小原:その距離の不一致感があの字幕効果によって一層出ている。映画表現としてこんな字幕の使い方を見たことがなかったのでびっくりしました。川上さんはさらりと言うけど、やってることはほんとにおもしろい。

川上:あの字幕も従来の用途ではなく、この映画に必要な距離を作りたくて。セリフを文字化することで、その場で起きていることから離れるために。もちろんアクセシビリティへの対応でもありますが。

小原:その中学生を演じるのは詰襟の男子学生服を着た女の子たちですが、この演出意図は?

川上:これはいろいろ悩みました。ただ、普段演劇を見たりしていて、自由に存在するあらゆる属性を組み合わせてお芝居にしてそれを俳優に付与したときに出るニュアンスはあるなと思ったので、それを写したかった。それを「男装」という言葉で片づけられてしまう世界からなるべく切り離すための字幕効果だったり、画面に一枚もやをかけたりして「これは映画です!」の距離を意図的に作るための工夫を今回はいろいろしました。俳優さんも役についてとても考えてくれて。役との距離をどこまで詰めて、どこでストップしたらいいのか。そのバランスをすごく考えてくれたから完成した映画です。劇中で俳優さんに演じてもらっていることのひとつが男性の加害性的部分ですが、それだけをむき出しに描きたいわけじゃない。登場人物たちの恋や愛の表現を映画として支えるための選択としても。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください