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山田孝之×仲野太賀が体現した、俳優としての“信念”【「十一人の賊軍」インタビュー】

映画.com / 2024年10月27日 20時0分

■山田孝之の心遣いに感謝しきりの仲野太賀

 過酷を極める撮影のなか俳優たちの士気を高めたのは、山田のとある心遣いだったと仲野。「今回の撮影場所は、都内から片道1時間半程度離れた場所で、毎日通いだったのでうが……。孝之さんが俳優部のために、オープンセットの近くに家を借りて合宿所みたいな場を用意してくれたんです。賊たち(俳優部)は、そこで寝泊まりしながら現場に通う日々。頑張ろう!というエネルギーになりましたね。お芝居においても、政を演じる上での孝之さんのストイックさに痺れっぱなし。政を演じるというよりも政を生きる、その姿が圧巻でした」

 仲野だけでなく、今作に出演する俳優たちも口々に「山田孝之に刺激を受けた、感謝している」と話している。近年は、俳優という肩書きにプロデューサーとしての活躍も加わる山田だからこそ、撮影現場をいかに“ワクワクする場”にできるかを試行錯誤していたのだろう。「失敗も含めて、学べるものは学んで、自分なりのやり方を見つけてほしい」と山田は言う。

 「エンタテインメントを作るひとりとして、まずは自分がワクワクしなきゃって思うんです。作品選びにしても、この人は次にどんな役をやるんだろう、何を見せてくれるんだろうって思ってもらうには、まずは自分がそう感じなくてはならない。結果、傍から見ると、人がやったことのないことをしていたりするので、事務所としては、どうマネジメントしていいのか手を焼いていると思うけれど、(後に続く人たちにとって)山田に比べたらまあいいかと思ってもらえたらいいかなって。しっかり真面目で、本気でふざけている、そういう所もちゃんと分かってほしいですね」と語る隣で、「ほんと、影響受けてます!」と大きく頷く仲野。

■仲野太賀&山田孝之、それぞれの譲れぬ信念

 この人が選んだ作品はきっと面白いに違いないと思わせる、山田孝之の先駆者としての歩み。山田に憧れて経験を積み、彼の隣に立つ仲野太賀の歩み。ふたりの俳優の歩みがかけ合わさる「十一人の賊軍」は、どうしたって魅力的だ。

 この映画の舞台となるのは戊辰戦争の時代。新発田藩による歴史的な裏切りのエピソードをヒントに、生き抜くための戦いが描かれる。そこに込められたメッセージは、今を生きる我々にも響くと二人は伝える。

 山田「いつの時代でも起きていることは変わらないですよね。力を持っている人たちが自分たちの考えで国を良くするために動いてはいるけれど、それに伴って(この映画の賊軍たちのように)使われる人たちがいる。彼らの、生きることに執着する姿を見せる作品だと思っています。政は、生き残って妻の元へ帰る、それが彼の正義のすべてだと思って演じました」

 仲野「孝之さんが言うように、時代劇ではあるけれど、描かれているメッセージは決して遠いものではないと思います。そして、生きることへの執着を自分の体で表現していくことの過酷さというか、斬ることも斬られることも、日常生活ではもちろん現代劇でも感じることのできない感情を、兵士郎を通じて感じることができた。なかなかやれることのない気持ちの振れ幅でした」

 映画から何を受け取るのかは人それぞれ異なるが、多くの人の脳裏に焼きつくのは、十一人の賊軍たちが必死に生きようとあがく姿、政や兵士郎の信念。キャラクターから滲み出るその信念は、山田と仲野が役と真摯に向きあい導き出した信念にほかならない。この二人の競演を見逃してはならない。

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