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「ANORA アノーラ」「リアル・ペイン」、エルトン・ジョンのドキュメンタリーも! 今年のニューヨーク映画祭で注目した5本を紹介【NY発コラム】

映画.com / 2024年11月10日 9時0分

 ベイカー監督作品の主人公は、ほぼ全員がティーンエイジャーのような精神年齢で、まるで子どものように行動するという点が一貫している。そこが落ち着いた“大人の価値観”を持つ人々には刺激的だろう。反対に、ティーンエイジャーの精神を持つ人々にとっては“共感”が得られるという“リアルな映画”になっていると感じた。

●「リアル・ペイン 心の旅」

 今年のサンダンス映画祭で初披露され、観客の間で好評だったことから、サーチライト・ピクチャーズが1000万ドルで買いつけたという話題作。「ソーシャル・ネットワーク」「グランド・イリュージョン」シリーズのジェシー・アイゼンバーグの監督第2弾でもある。

 数週間違いで生まれた従兄弟のデヴィッド(ジェシー・アイゼンバーグ)とベンジー(キーラン・カルキン)は、幼少期はまるで兄弟のように過ごしていたが、大人になってからのある出来事をきっかけに疎遠になっていた。だがある日、ホロコーストの生存者である最愛の祖母の死後、デヴィッドはベンジーのポーランドへの旅に同行することを決意し、祖母の故郷と第二次世界大戦の大虐殺にまつわる場所を巡礼しながら、2人は関係を修復させていく。

 家族を持ち生真面目な暮らしをしてきたデヴィッドと、思ったことを悪気もなくすぐ口にするものの、周り惹きつける魅力を兼ね備えたベンジーのやり取りが秀逸で、自分たちの思い通りにいかない旅路が、いつしか心に刻みつくような特別な旅路になっていく。長編映画では、実際のアウシュヴィッツ収容所で撮影された初めての作品となっている。全体的にはライトでコメディ調な作品だが、アウシュヴィッツ収容所内で重要なシーンが展開し、その後2人が疎遠になったきっかけをデヴィッドが旅の仲間に語るロングショットが涙を誘う演出に繋がっていく。

 共演者には、ジェニファー・グレイ、ウィル・シャープ、カート・エジアイアワンといった俳優たちが脇を固め、良質な脚本によって、見事な作品に仕上がっていた。今年のニューヨーク映画祭で最も感動させられた作品となった。

●「The Seed of the Sacred Fig」

 「ぶれない男」でカンヌ国際映画祭ある視点部門のグランプリを受賞、「悪は存在せず」でベルリン国際映画祭最高賞の金熊賞に選ばれたイラン注目のモハマド・ラスロフ監督の新作。ラスロフ監督が注目される理由のひとつは、イラン政府の体制に疑問を投げかける撮影を続けていること。強気な姿勢は海外での評価は高いものの、逆にいえば、常に危険と隣り合わせの状況でもある。イラン国内で起きた抗議運動に対する政府の弾圧を批判し、逮捕され、一度は恩赦を受けるものの、1年の懲役と2年間の国外渡航禁止を宣告されている。

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